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with green

 雨のつたう窓のなか、greenのギブソンによる音の青まとい定めるのはイケナイ検索、秘めたるワードを「」に打ち込んで、ああ、なんでもある。などといっている場合ではなかった。

 音の青が飾る薄暗い部屋のなか、冷蔵庫の空洞を確認する。思い至る誘惑の料理はセントルイスにつたわる本物のソウルフードだからといって飛行機などもってのほか、車輪の移動だから安心してよい。

 マンモスがふんでも壊れない靴を履く。らせん階段の途中、空間を支配する雨を避けながらタブレットの色に目を落とす。

 イケナイ検索結果で判明した異邦の違反者はミッシェル、ミカエル、マイケル、ミヒャエルと迷彩された国際の色彩。

 気がつけば車輪の移動は走りだしている。五〇キロで、けれどもとまらない。ブレーキを破壊した犯人はもちろんMだ。マンモスに負けない足で窓を蹴破り脱出しても雨には負けて街へ駆けた。

 大きなものを犠牲にしてセントルイスのソウルフードを求めて街をさまよい、ようやくしるしを見いだせば、さっそくレッドホットの効いたチリチキンにありつくと、wesのプレイは音が多すぎる、greenのような単音が味なんだとカウンターの奥にもたれる酔いどれ一匹がこちらを睨みつける。

 この街に貴重な野良犬、一緒に飲もうじゃないか。サイドディッシュなら再度チリチキンを追加、なんだって? そんなに丸腰をチェックしたきゃ好きにしたらいい腰抜け。

 メキシコ酒をどんどん煽らせてこちらもgrooveのため煽る。
 ららら
 野良犬とともにgreenを口ずさむ。

 飲むがいい。ただより値の張るものはない。野良犬の嗅覚がMのアジトを探ることになる。首輪など必要としないおまえはかぎつけた五〇キロのコカインに息を飲むことになるのだ。

 レインコート派だがこの雨天にはあきらめて広げる二つの傘、物凄い雨音を耳にしながら街歩き、連れを先に進ませて用心の足どり。と、降りしきる目前を、銃弾のような燕がよぎる。鳩もよぎる。

 野良犬の嗅覚はそこで途絶えた。屋上に伝書鳩が棲むレンガ細工のアパルトマンと雨を目にして足をふみ込むと、アジトのなかの階段を仰ぎ見る。

 最上階から、消された気配が降りてくる。駆け上がり切ったところ、あらかじめgrooveな状態にしてある軀ごとドアめがけて突っ込んだ。

 真っ赤な修羅場にまでgreenの音の青たちが輪舞している。


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