水分率 over you
なみだぐみつつ川縁を歩いて公園を横切るときには泣きだし、ついに街なかを号泣しながら歩けば、そんなやつになど眉ひとつ動かさない人々の姿が、逆の立場もあったろうかと目に滲む。
耐え難いかなしみに入院しそうなほど胸を締めつけられたままコンビニに入店し、未だ枯れない寝不足の目に水分不足の疑いを抱いてポカリスエット。
泣いても泣いてもかなしみに酔えず井の頭通りを剣呑なスピードで走り抜けるエナメル色彩たち向けてダイヴしようかなどとこちらとて剣呑。
おい、と鉢あわせた知人がかける声にすら嗚咽し怪訝そうな顔をされて逃げ去る。
近づかれる気配ではない。この気配は遠ざかられる気配、大切なみながみな遠くへいってしまう気配に途方に暮れて運ぶ足も重く。
列車の音がする。駅まえのショーウィンドウに映る自分のなんたるブサイクな。(いたとして)神様トヤラモヤッテクレルジャナイカとマネキンに神を投影。
買ってしまった乗車券をマシンが飲み込めば列車の音のなか、なみだながらに吊り革におつかまりになりお忘れものには十分注意して、いるだろういるかにあいにいく。
神の似姿としたマネキンは人に厳しすぎて、けれどもあの神の使いたちならば例の優しさの表情で慰めてくれるだろうと信仰をぼんやり持ってみれば上塗りされていくなみだ。
海にすまう神の使いを豚呼ばわりするとははなはだ失礼な言語と誰かもいっていたような。
泣くことのカタルシスというが、目が痛むわけでもないのになぜ泣くときに無駄な水分などが必要なのかと、むせび入るいまのあとなど想像できないまま訝る。
硝子越しの水分に聖なる遊泳を目撃するいま、じわじわと、溺れそうなこの状態を半信半疑にしはじめながら未だこの水分率。