コネクティングリーダー 〜 リーダーに求められる「つなぐ力」と、「報・連・相」を「される側」の心構え
「コネクティングリーダー」に関するハーバード・ビジネス・レビューの記事を読む。
コネクティングリーダーとは、「部下を管理するだけでなく、組織の上層と下層をつなぎ合わせたり、上層部の意思決定に直接影響を及ぼしたりするなど、リーダーのものとされる役割も担っている」リーダーのこと。
記事を書いたのは、サセックス大学ビジネススクールのザヒラ・ジャゼ(Zahira Jaser)。内容は、ジャゼが編集した2020年1月出版の「The Connecting Leader: Serving Concurrently as a Leader and a Follower」から、コネクティング・リーダーに求められる4つの役割をまとめたもの。
ジャゼが説くのは、壮大なビジョンでメンバーを鼓舞するリーダーと、決まったとおりに物事を進めるマネジャーを分けて考える間違いだ、ということ。
とくにミドルマネジャーは、「人間味があって洗練されたコミュニケーションスキルを持ち、社内の異なる階層に属する人たちの意見の違いを仲裁し、合意できる点を見出す」ことを通じて、上層部と現場を「つなぐ」ことが、これからますます大事になってきている。
こうした「コネクティングリーダー」の役割が、ビジネスを牽引し、物事を推しすすめ、組織の一体感をつくりあげることになる。
ジャゼによれば、「コネクティング・リーダー」が果たすべき役割は以下の4つ。
ここには4つの役割があると書かれているけど、まずは上と下の双方と話をして、どちらにも偏らない判断を行うこと(①)が大事。そして、交渉を通じて双方をうまく橋渡しできればいい(②)けど、一筋縄ではいかない場合は、批判的思考で創造的な解を探る力が必要(④)、という意味では、① ② ④は枝分かれした一連のプロセスとしてとらえることができそう。
これに対して、③は、現場の部下の意見をうまく吸い上げ、上司に伝え、上層部を動かしていく力が大事、という話。
ここに描かれているコネクティングリーダーの役割は、これまでなかった新たなリーダー像というわけではない。
従来は、マネジメントを遂行するうえで必要となる(判断や戦略立案、意思決定の後で必要となる伝達や調整、交渉のような、ある意味で従属的な)プロセスとしてとらえられていたことが、これからはリーダーに求められる役割としてますます重要になってくる、ということが書かれているように思う。
環境変化の大きさとスピードが増し、これに対応するために組織がフラット化すると、現場レベルで判断し、意思決定し、行動すべきことが増えてくる。しかしその一方で、組織間の関係のあり方や雇用形態も大きく変わっていることから、さまざまな関係者をつなぎ、まとめ、引っぱっていくことが、ますますむずかしくなる。
そうした状況が、これまでは「決める」ことがいちばん大事で、あとはそれを関係各位に周知徹底して「やる」だけ、みたいに考えていた後工程の重要性が増してきている、ということだと思う。
もっとも、これまで日本の組織では、①②④については「人間関係」という言葉でたくさんのことが語られてきた。でも、③の部分にはそれほど目が向けられてこなかったように思う。
それが証拠に、「報・連・相」が大事という場合は、つねに「報・連・相」を「する」側の心構えや行動が語られるけど、「報・連・相」を「される」側の心構えや行動については、問題になることがない。
この点については、コーチングのスキルや心構えとの関連で、6年ほど前に「日々の仕事に活かすコーチング 〜 「報・連・相」を「される」側に求められるスキルとは?」というタイトルで書いたことがある(そういう意味では、この役割もとくに新しいものじゃない。そして以下のリンクにはタイトルもサムネイルも表示されていない...)。
そこには、こんなことを書いていた。
コネクティングリーダーとの関連でいえば、「互いに学び合い、助け合える組織風土」の中で吸い上げた現場の声を届け、上層部を動かす力がコネクティングリーダーシップだ、ということになる。
この記事でもう1つ面白いと思ったのは、①に「共感」という言葉が使われていることからもわかるように、ミドルマネジャーの「感情」の役割に焦点が当てられていること。
ミドルマネジャーには、ますます「感情労働」が求められることになる。
これまで感情労働は、これまでは看護師や介護士、客室乗務員のように、直接、顧客と向き合うサービス業の問題としてとらえられることが多かったけど、そうした業種にかぎった話ではないよ、ということなのだろう。
結論:コネクティングリーダーは、心身ともにたいへんである。
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