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12日後に新刊を出す植本一子(2024/11/19)

朝起きて谷川俊太郎さんが亡くなられたことを知る。2度ほどお会いしたことがあるが、誰に対しても気さくな方だった印象がある。ナナロク社の村井さんが完成した『フェルメール』を献本すると、すぐに直筆の感想がお葉書で届いたと教えてくれた。あの本を出した村井さんへのご褒美であり、宝物だっただろう。お家にお邪魔してフェルメールについておしゃべりさせてもらったり、絵画が立体的に見えるおもちゃを一緒に覗いたり。2度目に歌人の岡野大嗣さんと木下龍也さんと伺った時には、私のことはすっかり忘れていたけれど、谷川さんがその時ハマっていた小さな中国製のドローンを家の中で飛ばしてみんなで遊んだり、とにかくチャーミングな方だった。冬の夕方の日差しの中、谷川さんの家の裏庭でみんなの写真を撮った。一歩一歩ゆっくりと、自分の足でしっかり歩かれていた姿を思い出す。

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筋トレ帰りにピコちゃん家に自転車で寄る。新刊を出すタイミングで既刊本にも注文が入り、ピコちゃんといかりんと一緒につくった『われわれの雰囲気』の在庫をもらいに。ピコちゃんは金川さんの日記のワークショップのメンバーで作った日記で文フリに参加するのだけど、ちょうど家のテーブルにその日記の完成したものが置いてあったので、ピコちゃんの部分だけその場で一気に読ませてもらう。目に見えない痛みとか苦しみとかって、人から理解されにくくて辛いよね、と言うと、そうなんだよ、とピコちゃん。ピコちゃんは2年前に事故にあった後遺症で、わたしは半年前の事件の影響で、お互い今も辛いところがあることがわかる。村上春樹の『アンダーグラウンド』にも、被害者の人のそういう話がよく出てくる。カウンセリングの先生から、そのことで傷つけられるのは二次被害だと教えてもらい、傷ついて当たり前だとわかっただけでもカウンセリングに行ってよかったと思う。
悩んだ時にピコちゃんに話を聞いてもらうと、いろんな視点があることを優しく示唆してくれるのだけど、日記にもその感じが出ていて、まさに彼女の文章になっていた。良い比喩表現がいくつかあって「いいね」と声をかける。ピコちゃんも参加している日記『P点で落ち合う』は金川晋吾のブース(L-10)で買えます。『われわれの雰囲気』もそちらでぜひ。

お願いしていたエッセイの感想が百瀬文ことももちゃんから届く。夢中になって1回ざっと読み、ココアを作って飲みながらもう1度ゆっくり読む。その度に涙が出そうになる。宝物がまたひとつ生まれたよう。六月さんにデザインしてもらい、自分の家のプリンターで印刷して、文フリで買ってくれた人の特典に差し込みで渡そうと思う。ちょうどさっき資材屋さんで、薄ピンク色の紙を買ったところだった。何色にするか迷ったけど、ももちゃんはきっとあたたかい文章を書いてくれるだろうと思ったから。


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