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『うたたねの地図 百年の夏休み/岡野大嗣』感想

岡野大嗣さんの新刊、『うたたねの地図 百年の夏休み』を読みました!最高でした!著者初の短歌×散文集ということで岡野さんの短歌に加え、文章も読める!贅沢!短歌のたねも収録されていて、岡野さんの頭の中というより心を見せてもらった感じがしてとても貴重かつ贅沢な本でした。岡野さんのファンにはたまらんぜ……。


夏という季節がかつてありまして終わりをさびしがるものでした

P7

この本には「夏」が詰まっています。胸がうずくような懐かしさとさびしさと愛しさが詰まっています。
プールバッグの感触や下敷きの風の涼しさ、広い畳の部屋の低いテーブルにごちそうが並んでいる光景、ひとつまでと言われて戻しに来た棚にお菓子を戻すべき場所が見つからない不安……繊細すぎるほど繊細で、日常すぎるほど日常、が、この本には詰まっていてそこがとても素敵でした。


校外の道に校内放送がはみだす 影に影が重なる

P28

百年は言うほど長くないのかも 下敷きの風もらう夕べに

P38

逆光に見えなくなっていく顔が生きる理由になる 生きていて

P61

おじいさんもおばあさんも切符を撫でている〈やがて、やがて、〉で終わるお話

P82

聴くたびにまだ生きているような気が もういないから 気がしてしまう

P128

岡野さんの持つさびしさは他の誰のものとも似ていないさびしさだなぁと思ったし、同時に誰もが共感できるさびしさだなぁとも思いました。

表紙や本の中にもある中村一般さんのイラストもどこか懐かしくてかわいくて最高だったし、本のデザインも工夫されていて素敵だったなぁ。カバー裏もみなさんぜひ見てください。できれば本を読み終わった後に。

この本を読んで当たり前にある日常を繊細に愛して生きていきたいと思いました。とても素敵な本でした。夏に読めてよかったな。
みなさんもぜひ読んでみてください!


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一条
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