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『ナターシャの踊り』を読み終えました。

『ナターシャの踊り』を読み終えました。
こちらではお久しぶりです。
ソ連時代の映画やデザインなど、色々と書きたいものはあったのですが、なかなか上手くまとめられず、更新に大分時間がかかってしまいました…。

昨年末から読んでいた『ナターシャの踊り』の上下巻を数日前に漸く読み終えました。
これは感想を書かなければ!と思ったのでここに残します。
1日のご褒美に、夜寝る前に少しずつ読んでいたので、こんなに時間がかかってしまいましたが笑、それでも上下巻合わせて800ページ以上もあるこの本を、全く飽きる事なく読めたのは作者と訳者の方の愛と情熱のお陰だと思っています。正直、いつまでも読んでいたかったですし、読み終えるのが惜しかったです。
興味を惹かれたテーマや言葉に付箋を沢山貼りながら読んだので、また事ある事に読み返していきたいと思っています。

結論から言って、本当に凄い本でした。
(これは余談ですが、私の棺桶には上下巻を揃えて入れてほしいと本気で思ってます。)
そして、この本を、侵攻が始まる前に読み始め、まだこの恐ろしい戦争が続く中読み終えたのは、とても複雑な事ではありますが、自分にとって、ロシア文化を取り巻く状況について色々な事を深く考えるきっかけとなりました。

面白いのは、この本の主人公が他ならない『ロシア文化』そのものである事です。
トルストイの『戦争と平和』において、何故、貴族令嬢であるナターシャが完璧に"農民のダンス"を踊る事が出来たのか?という問いかけから始まり、当初は仕事の延長にすぎなかった農民美術の発展から亡命後の各国におけるロシア人社会まで、芸術家、音楽家、作家、詩人など、今日における『ロシア文化』に関わってきた人々とその作品・生涯が、驚く程詳しく、そして幅広く取り上げられています。
全てのページが筆者のロシア文化に対する愛と情熱に満ちていました。

また、特にスターリン統治下において、芸術家や芸術活動が批判や危険に晒されてきた、悲しく恐ろしい当時のソ連の現実や、困難に屈せず自分の芸術を貫いて、時には追い詰められ、悲劇的な結末を迎えざるをえなかった文化人たちについても語られているところにも、本書の魅力を感じます。
ロシア国内での文化的活動が厳しく規制されている今の時代も、きっと同じような状況に立たされている文化人が沢山いて、苦しい想いを抱えているのだと思います。
逆を返せば、МИР(平和)の一言、白紙の紙を持つことすら許されない文化人たちをそれだけ恐れているのだと思いますし、素晴らしい文化や芸術にはそれだけ強い力があるのだと思います。私はその力を信じたいです。

長くなりましたが、もしロシア文化に興味があるのなら、是非手に取ってほしい一冊だと思いますし、全力でおすすめします。
ロシア文化に興味を持つ人間として、ロシア文化についてのあらゆる情報を網羅した、こんなにも素晴らしい本が出版され、日本語に訳された事をとても嬉しく思います。

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