見出し画像

下弦の月ってあの時見たやつだよね

しばらく休んでいた時間を経て、久しぶりに体を動かした。
洪水のような情報を逃れて横になったヨガマットの上で、頭に浮かんだのは一番最初に付き合った人のことだった。
人生で一番好きだったその人のことを、実感を持ってめちゃくちゃ好きだったなと、あの時みたいに人を好きになりたい、願わくばその相手と一緒にいられる未来が欲しいと思った。すっきりした体と心で思ったことは、きっと真意なのだと思う。

あの当時の私も臆病で、一歩も踏み出せなくて、一緒に星空を見ていた夜に、彼がこちらをじっと見ていたことも、髪に触れていたこともわかっていて、そちらを向くことができなかった。
それでもあの頃の方が自分の気持ちがはっきりと見えていたのは、想いや考えをそのまま受け止めて、きちんと向き合っていたからだと思う。

悪趣味だけど、件の彼のSNSを見たら
あの頃と変わらない文体で、自らの想いを綴り、あの頃と同じ趣味について熱く語っていた。
過去をずるずると引き連れている私はいけないんだと思っていたけど、
彼の文章を読んで少し赦された気がした。
彼こそとても人の気持ちに敏感で、繊細で、素直な人だった。
10年前に戻りたいとか、大人は辛いよとか、言ってもいいんだなって。
ダサいけど、ダサくていいんだなって。
勝手にキラキラした日常を送っているのだとばかり思っていたから、
ああ、新鮮味もちょっとずつなくなってきて、若さを恋しがって、大人になりきれなくて、
毎日同じ景色が流れていくやるせない日常なんだなぁって、分かった。

人と人との間で生きていく中で、
他人と自分を同じいち人間として捉えることと、
全く別の個体として捉えること、両方が必要だと思う。
私は使いどころをよく間違うので、他人を羨んだり、自分を蔑んだり、してしまうけど。

大人って自由だけど寂しいし、いつだって学生の頃が恋しい。
もうあんな季節はこないのかもと思いながら日常に抗うけど、自分だけが立ち止まっていて、周りばかりが進んでいるように見える。
そういうおセンチな夜にも、星や月は綺麗だし、あの頃そばにいた音楽は今も変わらず寄り添ってくれる。
しばらくはそれでいいと思うことにしよう。思ったことも感じたことも嘘じゃない。そのままでいいよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?