地下喫茶にて 前髪乾かす 桜桃忌
(2030字)
俳句も短歌も川柳もろくに嗜んだことがないのでアレですが、俳句に対する認識を改めはじめている。
葉桜の下に尚咲く花々の 人目に触れず朽ちた色にも
唐突になんか何でもいいから句にしたくなる季節になりましたやね。
私はプレバト俳句の添削が好きなのでよく見るのだが、ポンチさんが自身のYoutubeで自作俳句や短歌の紹介をしてるのを見つけた。
ポンチさん俳句推しなのでうれしい。
番組内で、私が見たやつで一番印象に残ってたのがポンチさんの
「サイフォンに潰れる炎花の雨」
と言う句。
この、喫茶店のあったかい、眠くなるようなオレンジの光の感じと、外がしっとり冷たいみたいな感じを真似したくて作ったのがタイトルの句。
そんでまた、夏井先生とその息子さんのYoutubeを見つけてやんせやんせ観ている。
どの動画で観たか忘れちゃったんだが、添削の際に「ストーリーを詰め込みたがる」人がいるとのことで、私も割とそのタイプなんだが「そんなに全部入れたいんだったら短歌や小説にしろ!」的なことをバサッと言っていたような気がする。
いやそりゃそうやなんだけど、「たしかにそうだよなあ」と思ってしまった。
私は結構今まで、十七音の中に情報があればあるだけいい(とまでは言わないけど)と思っていた。
自分の中にあるストーリーを短い言葉とリズムでどうやって表現するかを考えるのはけっこう楽しい作業で、うまくはまると面白い。
けど、ストーリーを無理矢理詰め込もうとして何も伝わらなかったら、本末転倒だなあと。
いや、改めてそりゃそうやなんだけど。
確かに十七音という容量しかないんだから、詰め込める量は有限だしなあ。
タイトルの「桜桃忌」という季語を知ったのもこの夏井先生の動画なんだけど、誰かの命日が季語になるという〇〇忌。
私は太宰さん好きなので太宰の桜桃忌を使ったんだけど、太宰と喫茶と桜桃がうまくリンクしてる感じがして気に入った。
しかもしっとり雨降る6月だし。
太宰が入水したのは6月13日くらいだったと推定されてた気がするけど、その時もこんな雨だったんかなとか考えちゃうしね。
さてさて、そんなことはよくて、私は自己表現というのは自分の感情ありきだと思ってる節があって、まず自分の誰かに伝えたい思いみたいのがあって、それをどういう手段を使って表現するのかという。
歌でも、踊りでも、言葉でも、絵でも、写真でも、映像でも、お芝居でも、立体造形でも、
上げてったらキリがないのが表現方法だけど、技術が先行してあるんじゃなくてまず中身だろうがよと。
思っているのだが。
この動画を観て、(正確にはこの続きの動画だけど)
色々と考えさせられてしまった。
俳句を語る上で外せないのが季語。
あと五感。
この動画でも言っているように、俳句というのは情景描写としての側面が強くて、気持ちを乗せるというよりは、言葉で自分の感じた風景を表すことが目的なのかもしれない。
この説明を聞くに、私が今まで季語を使ってるから俳句を作っていると思っていたものは得てして川柳的側面が強かったのかなあと思う。
私は隠れナルシシスト派閥なので、自己表現を行うに当たって色々な表現をしたくなるわけだが、ここでいう俳句の説明みたいに、自分というフィルターを一度通しているものの主人公はあくまでも被写体、みたいな表現にあまり興味を持てないでいた。
この動画を観て思ったのは、俳句は「写真」という表現方法に近いんじゃないかということ。
私は写真よりも絵とか映像派で、というのも写真も自分の裁量はあるもののやっぱり被写体の美しさが第一にあるんじゃないかと思ってしまう。
自分が心動いたものを誰かに伝えるための表現方法、というのでしょうか。
それは何か自分の中に何か思うところがあって、それを外に出すために表現をするのとでは確かにちょっと感覚が違うなと思う。
でもここまできて、自分の感じる被写体を誰かに伝えるという表現も、それはそれで面白いなと思う。
ただでさえ十七音しかないのに季語という共通の言葉を使ったらどんどん自分の濃度が薄くなっていっちゃうじゃないかというのが隠れナルシシスト派閥の思うところな訳ではありますが、例えば綺麗な景色の見えるところに行って、それを写真に撮って「見てここ綺麗だった」っていうみたいな、そういうコミュニケーションの表現として興味が持てる。
それに、感情ではないかもしれないが、やっぱり自分の「感覚」というフィルターを通しているのでそれは自分の表現だなあと言えるし、同じ世界を感じて、その感じ方はひとと違うものになるだろうし、でもその感じ方を伝えあったら違う感じ方を共有できるだろうし、色々と奥深いものがあります。
新しい季語を知ると何かそれで作ってみたくなるもので、素人ながらもうちょっと嗜んでみたいと思うわけです。
もちろん川柳も短歌も全然作りたい。
んでは。
君と昼のベッド ティファールの中は水
オリオンの三つ星はあれと指を差し 空の遠さにひとり寂しむ