アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』
常盤新平訳。
“軽妙”、“洒落た”という形容詞は、少しニュアンスが違うかなぁ。おしゃれな恋愛模様が描かれてるのかと思ったら、苦い後味の作品ばかり。
“男と女の機微”、すなわち、すれ違ったり傷つけあったり、かつては寄り添った二人の距離が少しずつ離れていったり、そういうドラマが描かれているのはその通り。
恋愛以外にも、若さ、青春、人生の可能性といったものを失いつつある人たちの苦い喪失感が描かれていたりする。
印象に残った作品は…
自分の青春が終わりつつあることを噛みしめる「80ヤード独走」
何を大切と思うか、価値観が食い違っていたことに気づく男女の、決定的な別れのシーンを描く「原則の問題」
人生の重要な選択をしくじった男の苦い後悔「死んだ騎手の情報」
かつて愛し合った女性が去っていくのを見送るしかない男の話が2つ、「フランス風に」は愛されていると思い込んでいた男の空疎な思い込みが崩れていく様子を描き、「愁いを含んで、ほのかに甘く」は誤解によって愛を喪う男の姿が、やはり、苦い。
強く揺さぶられるような作品ではないけれど、なかなか良かったです。和田誠の装幀も、読み終えて見直すと作品世界をうまく匂い立たせている。