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読了記録 2024

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#日本文学

芝木好子「湯葉」「隅田川」「丸の内八号館」

『芝木好子名作選(上)』に収録されている連作短編。

「湯葉」では、明治期を舞台に、湯葉屋の養女になった蕗の半生を描く。
「隅田川」では蕗の孫娘・恭子の、十代の少女の視点で父親やその周辺の世界、そして「丸の内八号館」では戦時下の閉塞した社会情勢の中で、会社員として働き出した恭子が新しい一歩を踏み出すまでが描かれる。

著者の自伝的要素の強い連作らしい。

相変わらず文章は素晴らしく、媚びるところも

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芝木好子「青果の市」

新潮社の『芝木好子名作選』を読み始めた。二段組の分厚い上下巻、全て読み終えてから読了記録を書くと、読み終えてから時間が経ってしまうので、収録作1作ごとに記録を付けておくことにする。

まずは芥川賞受賞作「青果の市」(1941年)。

戦争中に発表された作品で、同時代的な閉塞感を背景に、戦時下の統制経済の波に翻弄される築地の青果市場で逞しく生きる女性を描いた作品。

短い作品ながら、一人の女性の半生

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