【映観】『クラム "Crumb"』(1995)
『クラム(Crumb)』(1995)
監督: テリー・ツワイゴフ
ロバート・クラム(Robert Crumb) ドキュメンタリー映画。
1968年『Zap Comix』創刊、アンダーグラウンド・コミックスの旗手。
映画チラシは額に飾ってるくらいだけど、公開当初は見られず、今回amazon primeで見ました。
クラムといえば、まずコレですね。
彼自身も一番売れたヤツと云っております。
"Keep on Truck'in" 続けていく、走り続ける、とかいう意味だけど、
ヒッピー世代は"自分の生き方を貫く"という哲学的な意味に結びついてくらしい。
グレイトフル・デッドとの関連を尋ねられたクラムは、きっぱり退屈で眠くなる音楽と言い切ってた。
彼はロックがあまり好みじゃないらしい。
ついでにラップについても、舌打ちと罵声を浴びせるくらい嫌いらしい。
二番目は、誰もが知るジャニス・ジョプリン「CHEAP THRILLS(1968)」ジャケですね。
原画は持ってかれ、どんどん高値になって、彼には還元されていない。
ぶつぶつ文句は云うけれど、お金には無頓着なようである。
そんなクラムの実にアメリカ的縮図を感じさせる映画となっています。
スパルタの親父(既に他界)今で言うDVですね、アメリカの根本にあるのはコレじゃないかと勘繰るくらい、暴力による支配でその配偶者や子供はトラウマを抱えていく。
兄弟5人、長男は引きこもり、クラムは漫画家、次男は画家(自称)下に2人の妹がいる。
幼年期、5人で漫画秘密結社を作り、日々その作画と編集に追われていたそうだ。
長男の描く漫画のクオリティや、もう素人レベルではない。
手塚治虫も舌を巻くレベル、それがだんだん壊れていき、絵が端折られ文だけになっていき、それが何ページにも渡って読めないくらいの細かさで書き込まれていくノートは、精神疾患である。
次男の描く絵画もぶっ壊れていて、もはやこの兄弟鬱手なし。
クラムの偏執的な女性の下半身に対する執着、それが画に昇華されていなかったら、ただの変質者である。
絶えず筆を持て描き続けていく様が、もう異常者であり、存在理由が描くことなのだ。
だから紙一重、それ以外のコトには興味がないという気違いであるから天才。
戦前戦後のレコードを収集する佇まいも、なるほどクラムの偏執さを物語る。
この映画を境に、アメリカからフランスへと移住するクラム。
撮影一年後に長男が自殺した、さらりと注釈が入り、どこまで業深いんだと落ちる。
みんな病気なんだから、これ即ち、マトモな人の方が貴重種なんじゃないのか。
どいつもこいつも狂ってて、正気と狂気の境目が見当たらない。
世間はマトモなフリして仮面を被ってるけれど、クラムは漫画を赤裸々に描くコトでバランスをとる。
何と云われようが、"Keep on Truck'in"
だからカッコいい。