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【映観】『ミッドサマー』(2019)

『ミッドサマー(Midsommar)』

監督・脚本: アリ・アスター
主演: フローレンス・ピュー

公開時に映画館で観ました。
強力な匂いを放つ、近年稀に見るカルト作品だと思った。
映画館で中学生くらいか?、4人組の男の子らがワイワイ言いながらやっていた。
どんな映画だと思ったんだろうか? 僕自身もなんとなく入ってしまったので同じようなもんだが、
帰りしなの彼らは一切無言で、何か強烈なドラッグでも摂取したかのような青い顔だった。
変なトラウマにならなければいいけれど、
こうゆう映画を思春期に摂取するのはいい経験だ。
僕も十代に、ホドロフスキー「エル・トポ(1970)」を観て、とんでもない目にあった。
そんなような匂いも感じた、いわゆるカルトな作品が本作。
"サイコロジカルホラー"と呼ばれるジャンルだそうです。

【映観】「ドント・ウォーリー・ダーリン(2022)」で、フローレンス・ピュー

【映観】『ボーはおそれている』(2023)で、アリ・アスター監督

ときたので、配信でもう一度見返してみた次第。
主演の彼女は気取りもなくとてもいい、というか好みです。
「オッペンハイマー(2023)」で恋人役を演じていたそうだが、それはあまり記憶にない。(冷たい感じだった)
毎度の如く、ストーリーをお話しする積もりもない。
あくまでも印象をつらつら並べていくだけなのですが、ヴァース導入部があんなに長かったとは思わなかった。
主人公ダニー(F.ビュー)の立ち位置をかなり入念に仕上げていく。
妹と両親の心中自殺、彼氏との確執(表向きは良好に見えるが)友達との関係、そうしたコトを踏まえて
スウェーデンのホルガ村コミューンへの旅が始まる。

コミューンてのは怖い。
全体主義的で、その共同生活を成立させるためにイデオロギーや宗教が用いられ、戒律やルールが重要視される。
そうなると集合体から反した者は罰せられるのだ。(常識とはかけ離れた孤立した世界で)
ホラー映画「2000人の狂人(1964)」でもいいし、「イージーライダー(1970)」でもいい。
社会から弾き飛ばされた者、村八分、忌み嫌われた者の末路は、追放か死が待っているのだ。
独自の社会、共通の認識が支配するコミューンでは、外部の者を排除する力が働く。
仲間内でさえ、連合赤軍のような総括(制裁)がまかり通ってしまう。
だから僕はあらゆる集団組織が嫌い(怖い)です。
イデオロギーは良くても、それを扱う者と集団心理に因って、操作されてしまうのだから。
そんな組織も最初はとても敷居が低い、
むしろヤバいとこほど甘い蜜、そんな導入部、
行きはよいよい帰りはこわい、てなもんだ三度笠。

深読みはしません。
体感型ホラーの楽しみを全身に浴び、とことん行き着くとこまで突っ走る。
ヴァース部で用意された彼女のトラウマなど、このコミューンでは取るに足らない事柄です。
怖いのはコミューンの群像劇、それが色彩豊か(極彩色)に描かれていく。
この際立った色彩が好きです。
デレク・ジャーマン的だ。

そして白夜というシチュエーション。
まさにタイトルともなっている「ミッドソッマー・ダーゲン(Midsommardagen )」
冬の長い北欧で、クリスマスと並び称されるほどの特別な日である夏至。
ずっと太陽が昇っているという恐怖。
正常さを壊す装置にもなっている。

この映画かなりエグいので、ご覚悟の程ご鑑賞ください。
そしてアリ・アスター監督と、フローレンス・ピューは、追っていきたい。


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