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デザイン活動の成果を最大化するための目標〜事業フェーズごとの事例〜

こんにちは。rootでデザインプログラムマネージャーとして活動している岸(@RyoheiKishi)です。

私たちrootは、事業と組織の成長を共に実現するデザインパートナーとして「Design Doing for More〜デザインの実践を個から組織・事業へ〜」というビジョンを実現しています。

これまでもいくつかrootのデザインパートナーとしての支援のあり方について記事を書いてきましたが、今回はその中でもクライアントとの「目標設定」について、横断的な取り組みの事例をご紹介したいと思います。

以下のような課題感を持つ方は、ぜひ読み進めてもらえると発見があると思います!

  • 開発計画や足元のデザインタスクは要求されるが、中長期視点でのデザイン計画やリソース検討が行われない

  • 表層的なデザイン依頼が多く、上流への関与・貢献が難しい

  • 複数のデザイナーが在籍しているがチームや組織としてデザインに関するアセットが貯まらない、活用できていない

  • 経営者やマネジメント層のデザインへの期待値が上がらない、上げるためのアプローチがわからない


デザイン活動の成果の最大化に向けた目標設定。その重要性と難しさ

デザインに限らず、ある物事が事業成長において明確な貢献を果たす上では、それが事業成長の1ピースとしてどう位置付けられるのかの議論が出来ることがスタートラインです。

しかし現状、事業環境においてデザインに関する中期的な計画やマイルストーンは引かれないこともしばしば。開発計画の中にデザイナーのリソース配置やプランニングが敷かれてしまい、期待通りのデザイン成果を得るのが難しくなる、という状況も珍しくありません。

たとえデザインに力を入れていきたいという意志があったとしても、その答えが「とりあえずチームにデザイナーがいればいいだろう」となってしまうと、正しい事業成長へのデザインによる貢献ができないまま、なし崩し的に活動を続ける結果となり、誰の幸せにもつながりません。

一方で、デザインは何に使えてどんな結果を残してくれるのかという問いに対して、組織の中でデザインに対する解釈や期待値のゆらぎが大きいのもまた事実。色々な方針があり得る中、重要なのは事業成長にまっすぐ向かっていくために、どのようなデザイン成果が求められるのか、という点です。

だからこそ、事業成長においてデザインは一体何をなす存在なのか、チームで目線を揃える。これがデザイン活動の成果を最大化するための目標設定の要点だと考えています。

rootにおける事業フェーズごとの目標設定の事例

rootは多様な事業フェーズを対象として活動しています。
そこで、当社の各デザインプログラムマネージャーが目標設定というテーマとどのように向き合っているのかアンケート・ヒアリングを行い事例を集めました。実際は文化や業務領域という切り口でも分析可能だと思いますが、大きく事業フェーズごとで分けています。

それでは各事業のフェーズごとに、これまでの事例をご紹介していきます。

事業立ち上げフェーズ

MVPローンチに向けては、まず必要なものを作ることが目標となり、日々状況が変わっていきます。適切に属人性を維持し続けることが重要なフェーズなので、それに合わせて機動的に動くための体制づくりを行っています。

  • toC向けコミュニケーションアプリ開発の事例

情報の非対称性をなくすためのオンボーディングやワークを実施

体制:
開発規模は5名。ファウンダー/デザイナー/エンジニアの1ライン

目標:
MVPローンチに向けたマイルストーンを引きこれを達成することが目標。同時に成功の型を見つけ行動量を最大化するため、デザインチームに対して、ファウンダーの意志への追随とアクションのスピードを重要な指標とし、これを目指すための体制構築。

ポイント:
☝️機動力を高めるための立ち回りを意識
立ち上げなので、体系的に目標を立てて運用するよりも、日々意思決定の変化に合わせて機動力を上げることを重視。ファウンダーの関心が向く先が何かを理解・咀嚼しチームとして何をアウトプットすべきかを細かく判断しながら進行した。

☝️観点を密に共有しつつ素早いイテレーションを行う
多忙なファウンダーの状況、日々更新される情報に追随するため、「いかにこぼれるボールを自分から拾って動かせるか」の姿勢を強化するフィードバックを実施し、また非同期・同期含めデイリーで情報をシンクする時間をアレンジした。
とにかくアウトプットのスピードを上げ、議論した日のうちにその内容を形にし、チーム内で構想の解像度を高めることに注力した。

結果:
プロダクトが抑えるべきポイントの目線が揃い、個々人で何をやるかを判断、遂行するのではなく、チームとして何をすべきかの意思決定ができた。またそのコストも下げられている。


  • toB向け社内コミュニケーション改善SaaS開発の事例

体験の議論を深堀るためのワークを実施

体制:
開発規模は8名。戦略・企画/デザイナー/エンジニアの1ライン

目標:
数ヶ月以内に、顧客に新しい体験を届けることができるようなプロダクトを完成させること。
新規性の高い領域で、かつスタートアップ企業のファーストプロダクトのメイン機能は競合優位性や独自性に直接寄与するため、どれだけ体験がユニークで新しく、そしてユーザーに価値があるかを重点的に議論することを指針とした。

ポイント:
☝️議論テーマを絞るためのファシリテーション
企業にとって初めてのプロダクト開発ということもあり、画面に閉じがちな議論を開くため、重要な軸である「体験」にフォーカスするようファシリテーションをサポート。
画面に囚われずに発散・収束をしやすくするため、会議においては常に画面とユーザーフローを用意し、具体と抽象を行き来しやすい環境を作ると同時に、本来提供したい体験が再現できるかどうかも毎回確認した。

結果:
4ヶ月の期間の中で、当初想定していた仕様を上回る、体験ベースの機能検討ができ、より大きな評価につながった。今後の継続的な契約についての検討も進んでいる。

グロースフェーズ

グロースフェーズにおいては、短〜中期的にプロダクト改善・品質向上を止めずに継続し続けるため、継続的・体系的な目標設定が行われています。

  • toB向け採用関連SaaS開発の事例

成果に対する評価の認識合わせをFigjamで行い議論のとっかかりに

体制:
10名未満のチーム。企画/デザイナー/開発の1ライン。

目標:
シェアの拡大に向け、競合プロダクトが備える機能を備えていく必要がある状況のため、安定した機能追加をし続けられること。

ポイント:
☝️月ごとの現状診断と目標設定サイクル
事業上実現したいことと、デザインチームが出せている成果とを照らし合わせ、その結果品質・レスポンススピード・ドメイン理解度合をそれぞれチームで改善する対象として合意。その観点に基づき振り返り・次のTRY定義・実行できたか否かのチェックができる月次サイクルを立てた。

結果:
TRYとフィードバックを重ねてデザイン活動の改善を重ねた結果、品質を維持しながらスピード早く開発を回すことができるようになった。


  • toB向けセキュリティ評価SaaS開発の事例

実際に立案されたOKR

体制:
約30人。戦略・企画/デザイナー/エンジニアの1ライン

目標:
もともとデザインのアウトプットや企画力には大きな課題感はなかったが、より他社サービスとの圧倒的な違いのある体験を生み出す余地があった。
そこでデザインチームとして、企画・開発の効率化と企画力の向上を狙った。

ポイント:
☝️デザインOKRの導入
他社サービスとの圧倒的な違いのある体験を生み出す上で、チームの力を底上げするため、OKRによる目標管理を行った。いち施策に目を向けた検討ではなく、一貫した体験を意識した企画と、デザインシステムの作成・更新とを少人数で両立して行える状態を目指した。

結果:
OKRを通じてデザインチームの活動の透明性が増し、活発的に開発チームとの交流が増えることで、企画・開発の効率化が実現した。またプロダクトの体験的な品質を競合優位性として位置付けながら、戦略的にその向上を進められた。

組織化フェーズ

組織化フェーズはまだTRY中の領域ですが、目標を定めることそのものを目標とするケースに関わっています。

  • エンタープライズ企業のtoB向けサービス群の事例

組織目標を区分けし、チームを分化して議論を進める

体制:
10前後の事業が並行して動く中での横断組織。各事業からデザイナー・エンジニアが集まる10数名程度の組織。

目標:
事業をより円滑に進めていくための、横断組織の位置付けの定義。具体的には横断組織と事業との関わり方や、メンバーの役割、活動の指針を決めていくこと。

ポイント:
☝️小さくはじめ、人を徐々に巻き込む
組織にとって未経験の活動なので、とっかかりになる論点を見出し議論を始めることが重要だった。そこでまずチームのコアメンバーと小さくすり合わせを始め、仮説を立ててから議論の範囲を広げる、という動きを繰り返した。組織としての動きに慣れていないチームだったため、いきなり大きな話をぶつける前に、全員への1on1などを通じて、それぞれの持つ意思や方向性を確かめた。

☝️組織的に考えを進めるための枠組みを作る
チームとして事業貢献できている状態がどんなものかについて、すべての角度から同時には議論を進められない。今見えている範囲からテーマを分割し、そのテーマごとにチームに分化。チーム毎に現状診断、課題の整理と構造化、注力領域の定義の流れで議論を深められるようなワークと座組みを作った。

結果:
まだ取り組みの途上で組織としての目標を持つには至っていないものの、対象とする集団全体に「組織」という観点から活動を見つめ直す機会に。構成員それぞれが、個の集まりではなく総体として活動するために何をすべきか考え始めるきっかけとなった。


このように、デザインの活動の成果とその目標設定のあり方は、状況に応じてそのやり方が変化していきます。一方でどのプロジェクトにおいても、事業成長に必要な指針の分解、そしてその波及のさせ方に工夫が置かれています。
さらにこうしてデザインを組織的に実践していった結果、事業におけるデザインの位置付けがよりクリアになり、期待・投資が底上げされたケースもありました。
事業における期待を知り、目標をたて、組織として実行・達成していく。これが事業成長にあわせて成長する、組織的なデザイン環境の実現に不可欠なアクションです。

事業フェーズが異なっても共通する観点

また他にも、ヒアリングを通じて、これは共通してそうだな、というポイントも得ることができました。

☝️状況に応じて、事業と組織(チーム)それぞれの目標を立てる
事業目標だけが先行しすぎると「作ること」にフォーカスが当たりきってしまい、必要な組織の強化やガバナンスにまで目が向けられないことがあります。目の前のことだけではなく、事業のフェーズに合わせて適切なサイズのデザインチームを運営していけるよう目標を立てることで、事業全体の顧客体験、ブランド価値を高められます。

☝️言語化が困難な領域も行動可能なレベルまで分解する
例えば「チームの状態」のような抽象的な領域では、目標が曖昧になってしまうケースもあります。
しかしここで重要なのは、どんな精度であれとにかく分解し実行可能な形にする、というところです。
いつまでに、何を、誰が、どうやってやるのか。当たり前のことかもしれないのですが、たとえ言語化が困難な目標についても、アクション可能な範囲まで近づけられるほど、強く推進力が生まれ、行動結果からの学習量も増えていきます。

☝️解釈の余地がない完全結果として定義する
例えば、「〇月〇日までにデザインを作成する」という表現だと「デザインは作成したがレビューは完了していない状態」なのか「ステークホルダーと合意を得た状態」なのかによっては進捗が全然異なります。
チームの認識を揃える上で、解釈の余地がない完全結果での記載が出来ているかどうかは重要なポイントです。

☝️ロードマップに合わせて最適な環境を作る
目標は必達とされるものもあれば、柔軟な軌道修正を前提とした場合もあります。多くのケースでは、引かれたロードマップのどこがコミットメントなのかをチームで共通理解とし、それに合わせた環境づくりをしています。例えば不確実性が高い領域へのチャレンジを伴うような場合は、すぐにチームで調整しやすくするために高頻度に場を設定したり、その相談がしやすい雰囲気を作る、ということが求められます。

まとめ

デザイン活動の成果・目標との向き合い方を切り口として、rootのデザインプログラムマネージャーがどのような活動を行っているのかについてご紹介してきました。

rootでは複数の事業フェーズに関わるメンバーが在籍しており、また1人で複数同時に関わることも相まり、活動を相対的に評価できる、という特徴があります。
今回ご紹介したように、特定の切り口から横断的にナレッジを割ってみると、色々な発見が得られます。
また同じフェーズであったとしても組織文化や問題領域ごとにそのアプローチは異なるので、本当に再現可能なことはなんなのかを探求し続けることもできます。

これからも、事業成長にストレートに貢献するためのノウハウを、組織的に蓄積し続けていきます💪
お読みいただきありがとうございました。

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