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次世代作家文芸賞への投稿で心がけたこと・取り組んだこと7選!
第二回次世代作家文芸賞にてありがたくも特別賞を賜り、度重なる加筆・修正を経て、2024年3月8日に徳間文庫より『アルゴリズムの乙女たち』が刊行されました。ぜひお読みください!
次世代作家文芸賞の公式サイトはこちら↓
2022年に開催された次世代作家文芸賞で、私がどんな心がけで取り組んだのか、どんなことに気をつけたのか、などをご紹介します。
主に、これから小説の新人賞にチャレンジしようとしている、またはすでにチャレンジ中の書き手の方にとって参考になればと思います。
ただし、以下に記す内容は「このとおりにすれば他の小説新人賞でも受賞できる!」というものではないですし、私から「こうすべきだ!」と押しつけるつもりものでもありません。あくまで「こんなやり方・考え方もあるのかぁ」と、参考程度に捉えてください。
1. 募集要項を何度も読んだ!
まず最初に、公式サイトで文芸賞の概要を把握しました。細かいルールをきちんと理解せずに投稿しても、選考通過は難しいと思ったからです。
それに、仮に受賞できた場合は出版社の編集担当の方やその他の関係者ともビジネスとしてコミュニケーションを続けることになるので、ルールを守ることは最低限の礼儀だと理解していました。
というわけで何よりも先に、投稿の締切はもちろん、提出物の詳細やその他のルールも頭に叩き込んでおきました。
次世代作家文芸賞では募集部門が3つあったのですが、部門によって提出物、字数制限、フォーマットなどが異なっていたので、なおさら注意するようにしました。
2. 前回の選評や他の新人賞の選評をたくさん読んだ!
第一回開催時の最終選考での選評が公式サイトに掲載されていたので、大賞受賞者の分も、落選された方の分も、それぞれしっかりと確認しました。
また、他の小説新人賞の公式サイトも参考にし、各社の編集担当の方やプロ作家のコメントにも目を通しました。
これは、今にして思えば効果があったと思います。読んでいるときは耳が痛いし胃も痛くなるのですが、「これはちゃんと守ろう」「これは気をつけよう」と自分事として捉えて執筆に取り組めました。
3. 今までにないものにこだわった!
作品の投稿を決めてから考えたことは、昨今のトレンドも大事だけどやっぱり一番大事なのはオリジナリティだろう、ということでした。
……なんて言い方をするとカッコよさげな感じがしますが、実は、私の場合は最初から競プロ(競技プログラミング)を題材にして書こうと決めていました。
競プロ小説というものを少なくとも私は見聞きしたことがなかったので、題材がすでに新しくオリジナリティが高いと考えたのです。
でもこのことは、多くの選考者にとって馴染みがなく評価しづらいという意味でもあり、新規性だけ高くても選考通過は厳しいかもしれないとも思っていました。
さらに、経験がない人にとっては多かれ少なかれ敷居の高さを感じさせるような題材だったので、作品において題材以外の要素はできる限りシンプルなほうがよいと考えました。
なので、ストーリィ展開は《仲間集め・ライバル登場・合宿・挫折・再起・決戦》という王道の青春部活ものにして、キャラはできる限り愉快でクセの強い感じにしようと決めました。
この方針は功を奏したと思っています。と同時に、競プロという今までになかった題材を選んだことがやっぱり大事だったと感じています。
4. プロットをしっかり組むようにした!
次世代作家文芸賞の場合は、原稿とあらすじに加えてプロットの提出も必須だったのですが、そうでなくともプロットは作成していたと思います。
小説という創作物に限らず、何かモノづくりをする際は設計書が必要だと個人的には考えています(建物とかプラモデルとか、etc)。
設計書がないまま制作に取りかかると、制作するものが複雑な構造をしているほど気づかないところで細かいミスが重なり、最終的に仕上がったと思ったら「あれ……思ってたんと違う……?」となるだろうなと考えました。
熟練の書き手だというならまだしも、私の場合は当時まだ執筆経験が浅かったので、最初にきちんと設計書を作ったほうがいいということでプロットをしっかりめに組みました。
執筆ツールNolaとPower Pointを駆使して、プロットだけでなくキャラや世界観の設定なども含めて整理してから本文を書き始めました。
長編小説の場合は10万文字以上書いて、しかも1つの物語として成立していなければならないので、もしプロットをしっかり組んでいなかったら途中で迷子になっていたと思います。
プロットの重要性を実感できました。
一方で反省点もあって、プロットをがっちり組むということはストーリィをあらかじめ規定してしまうということ。
キャラ同士の会話や関係性からストーリィが自然と動く、ということが多少なりとも抑制された状態で執筆を進めることになるわけです。
これは、読者からするとキャラがストーリィ進行のために動かされている、いわゆる《駒》のような印象を受けてしまう。
キャラ設定をあらかじめ細かく考えていたにもかかわらず、本作では少なからずこのような傾向が出てしまいました。
大賞ではなく特別賞だった大きな理由がここにあると反省しています。
なので今では、プロットをまえもって固めたとしても、実際に本文を執筆していく中で自然発生的にキャラ同士の関係性が生まれて「あれ、この展開だとプロットと変わってくるな」となっても、キャラの要請に従って書き進めるようにしています。
5. 短期決戦で臨んだ!
自分の場合は、全体的な制作期間を長く見積もってしまうとついついダラけてしまうような気がしていたので、制作を開始した時点で短期集中的に挑もうと考えていました。
2年以上まえのことなので若干記憶があいまいですが……制作期間は実質2か月(寝かせた期間含めて3か月)くらいでした。
・構想 0.5 か月:2月初旬~中旬
・初稿 1.0 か月:2月中旬~3月中旬
(・熟成 1.0 か月)
・改稿 0.5 か月:4月中旬~4月末
今にして思えば、寝かせた期間をもう少し縮めてそのぶん改稿に時間を多く取ったほうがよかったかな、と。この経験を現在の創作活動にしっかり活かすようにしています。
6. とにかく最後まで書ききった!
初稿では「完結できなければ投稿できない、書き上げられなければ投稿する資格がない」とフィリップ・マーロウばりのストイックさを自分自身に課して、どんなに拙く感じてもとにかく最後の《了》まで一気呵成に仕上げることを心がけました。
作中で「やっぱりこうしておけばよかった……!」というシーンやエピソードが後から見つかったとしても、文章や設定の矛盾点に後から気づいたとしても、全部書き上がってさえいれば締切まではいくらでも修正できます。
でも、書き上がっていない状態だと、ああでもないこうでもないと彷徨って永遠に完成できなかったと思います。
不安に駆られたり、不満を抱えたり、創作活動中にはいろいろな感情が湧いてきて途中で投げ出したくなることも多々ありますが、自分を信じて最後まで書ききることが大事だと思っています。
7. 自分の心の声に従った!
制作期間中は、自分で書きながら、または書き上がって読み返しながら、自分自身が心躍るようなものを追求しました。
そうでなければ読み手には楽しんでもらえないし、エンターテインメント作品としてそれは致命的だと思ったのです。
また、競プロのテイストを競プロ経験者に寄せすぎると、未経験の読者は置いてけぼりになってしまうし、その逆だと経験者は白けてしまうので、両者のバランスを取るのが非常に難しかったです。
自分が競プロの楽しさや大変さを実感したときのように、読者にも自分の作品を通じてその疑似体験をしてもらいたい。
さらには、この小説を読むことで心躍る読書体験をしてもらいたい。
そんな想いをありったけ込めました。
作品創りの間、何かに迷ったり考えあぐねたときは、そんな想いを優先しました。いちクリエイターとして、自分の心の声に従おう、と。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
本作の刊行後、幸いにも多くの方々にお読みいただいて、著者冥利に尽きます。ご感想は十人十色なれど、本当に感謝の念に堪えません。
これからも《次世代作家》の名に恥じない作品創りを続けていきます。
また、これから小説の公募にチャレンジしようとしている、またはすでにチャレンジ中の書き手の方向けに、投稿するまえに気をつけたほうがよいことをリスト化していますので、こちらの記事も合わせてご参照ください。
今後とも応援していただけるとめちゃくちゃ嬉しいです。
何卒ご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます!
明治依吹
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