【HRテックカンファレンス2024】参加レポートVol.1『HRのためのデータ透明性文化の創出』
HRテックカンファレンスとは?
2024年9月24-26日にかけて、アメリカ・ラスベガスにて開催される世界最大の人事テックイベント、HR Tech Conference & Exposition 2024。
HR Technology Conference & EXPOは、HR Tech領域ベンダーが出展するエクスポ(ブース出展)、各企業の事例やインフルエンサーがトレンドを語るカンファレンス、明日のトレンドをつくるpitch(ベンチャー企業のプレゼン大会)等が行われる【世界最大のHR Techイベント】です。
HR Techという言葉が注目されてから久しく、日本でも効率化・自動化・最適化等をテーマに魅力的なサービスが展開されています。しかし、日本の市場規模が1,200億円程度とされる一方、世界のマーケットはは2018年時点で146億8,000万ドル(およそ1兆6000億円)とまさに桁違い、しかも年10〜11%で成長しており、2025年には300億ドル(約3兆2000億円)に達する見通しでした。なかでもアメリカでは、平均従業員一人当たりで300ドルの投資がなされているとのことで、各企業が重要な投資分野と位置付けており、それに伴いベンダーも魅力的なサービスを提供し続けています。
参加できたセッションについてはラフな文章ではありますが皆様に共有をさせて頂きます。ご参加された方は社内レポートなどの参考にして頂ければと思います。
HRのためのデータ透明性文化の創出
日時: 2024-09-24
スピーカー:ダニエル・ブッシェン、サノフィの人事データガバナンスおよびスチュワードシップ担当グローバルヘッド
タイトル名:HR のためのデータ透明性文化の創出
キーワード
HRテクノロジー データガバナンス データ倫理 GDPR
主な学び
1. HRテクノロジーの設計図: HRテクノロジーの採用とそのフレームワークについての知識。
2. データガバナンス: データガバナンスのフレームワークとその重要性についての知識。
3. データの倫理と透明性: データの倫理と透明性に関する知識。
4. AIとデータガバナンス: AIのスケールとデータガバナンスに関する知識。
5. データの分類と使用: データの分類と使用に関する知識。
知識の説明
1. HRテクノロジーの設計図
· キーポイント
o HRテクノロジーのフレームワーク
o HRテクノロジーとソリューションの利用
o モバイルストラテジー、コンテンツストラテジー、データプライバシー
· 説明
HRテクノロジーの設計図は、HRテクノロジーのフレームワークを理解し、どのようにそれを利用してHR力を強化するかを決定するためのものです。モバイルストラテジー、コンテンツストラテジー、データプライバシーなどの要素が含まれます。
2. データガバナンス
· キーポイント
o データガバナンスのフレームワーク
o データの使用と透明性
o データの品質と定義
· 説明
データガバナンスのフレームワークは、データの使用、透明性、品質、定義を管理するためのものです。データの使用に関する透明性を確保し、データの品質を維持するためのプロセスが含まれます。
· 製薬業界のケース
ある製薬会社がHRISの設定ミスにより罰金を科されたケース。
1. 製薬会社がHRISの設定を誤り、特定の国で違法な設定をしていた。
2. 会社は製品の問題だと主張したが、罰金を科された。
3. 透明性を持ってデータの使用目的を明確にすることが重要。
3. データの倫理と透明性
· キーポイント
o データの倫理
o データの透明性
o データの匿名化と保護
· 説明
データの倫理と透明性は、データの収集、使用、保護に関する倫理的な考慮事項を含みます。データの匿名化や個人情報の保護が重要です。
· エスニシティ(倫理性)に基づくデータ分析
エスニシティとリーダーシップの近さが販売成績に影響を与えることを発見したケース。
1. リーダーシップに近い人々がより良い販売成績を上げる傾向があることを発見。
2. エスニシティとリーダーシップの近さが成功に影響を与える。
3. データの倫理を考慮し、適切な方法でデータを使用することが重要。
4. AIとデータガバナンス
· キーポイント
o AIのスケール
o データガバナンスの役割
o データの分類と使用
· 説明
AIのスケールとデータガバナンスは、AIの能力を拡大するためのデータガバナンスの役割を含みます。データの分類と使用に関するルールが重要です。
5. データの分類と使用
· キーポイント
o データの分類ルール
o データの使用目的
o データの透明性
· 説明
データの分類と使用は、データの敏感度に基づいて分類し、使用目的を明確にすることが重要です。透明性を確保するためのプロセスが含まれます。
· リモートワーカーのホームアドレスの使用
ホームアドレスを職場として使用する際の問題。
1. ホームアドレスが職場として使用される場合、その情報の取り扱いに注意が必要。
2. ZIPコードの共有が地理的な位置を特定するために使用される可能性がある。
3. データの使用目的を明確にし、適切な方法でデータを管理することが重要。
(参考)GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)とは
EU(欧州連合)における個人データの保護とプライバシーに関する規制。2018年5月に施行され、EU域内で事業を行う企業やEU居住者のデータを扱う全ての組織に適用されます。具体的には、以下のような内容が含まれています。
1. 個人データの定義
GDPRにおける「個人データ」とは、識別可能な自然人に関連するあらゆる情報を指します。これには、名前、住所、電子メールアドレス、IPアドレス、位置情報、オンラインID、さらには生体認証情報や健康情報なども含まれます。
2. データ処理の原則
GDPRはデータの処理に対して以下の6つの基本原則を定めています。
合法性、公正性、透明性:データ処理は適法で、公正かつ透明でなければならない。
目的の制限:収集したデータは、特定の合法な目的にのみ使用されるべき。
データの最小化:必要最小限のデータだけを収集する。
正確性:データは正確で、必要に応じて更新されるべき。
保存期間の制限:必要な期間のみデータを保存し、それ以降は削除する。
機密性と安全性:適切な技術的・組織的な対策を講じ、データの保護を確実にする。
3. データ主体の権利
GDPRは、データを提供する個人(データ主体)にいくつかの権利を付与しています。HRの観点からは、従業員の個人データも対象となるため、これらの権利への対応が必要です。
アクセス権:データ主体は、自分の個人データがどのように処理されているかを知る権利があります。
訂正権:データ主体は、自分の個人データに誤りがあれば、それを訂正する権利があります。
削除権(忘れられる権利):特定の条件下で、データ主体は自分の個人データの削除を要求する権利があります。
処理制限権:データの処理を制限することを要求できる権利があります。
データポータビリティ権:データ主体は、自分の個人データを別のサービスプロバイダーに移転する権利があります。
異議権:特定の状況下で、データ処理に対して異議を申し立てることができます。
4. データ管理者とデータ処理者の責任
GDPRでは、データ管理者(個人データの処理を指示する者)とデータ処理者(データ管理者の指示に基づいてデータを処理する者)の役割が明確に分けられています。HRは、通常はデータ管理者の役割を担い、従業員や応募者の個人データの取り扱いに責任を負います。これには、第三者(例:クラウドサービスプロバイダー)がデータを処理する場合の監視や契約の適正化も含まれます。
5. データ侵害通知義務
個人データの侵害が発生した場合、企業はその侵害を知ってから72時間以内に監督機関に報告しなければなりません。また、侵害がデータ主体に重大な影響を与える可能性がある場合、データ主体にも通知する義務があります。
6. 違反に対する罰則
GDPRの規定に違反すると、重大な罰則が科されることがあります。違反に対しては、最大で年間世界売上の4%、もしくは2,000万ユーロ(約30億円)、いずれか高い方の金額を罰金として科される可能性があります。
HRへの影響
HRの業務は個人データ(従業員や応募者)の処理を含むため、GDPR遵守は特に重要です。例えば:
採用プロセス:応募者の個人データをどのように収集し、保存し、処理するかについて透明性を持たせる。
従業員データの管理:従業員のデータアクセス権や削除権に対応し、セキュリティを強化する。
データ保護ポリシーの策定:企業のデータ保護ポリシーを見直し、従業員に対して定期的な教育を行う。
GDPRに準拠するためには、HR部門はこれらの規則を理解し、従業員のデータを適切に管理することが求められます。
まとめポイント
・データを活用するために、テクノロジーや技術の問題以上に文化的な側面が重要である。HRが扱う情報の多くは個人情報であり、プライバシーを守るという大前提(GDPRなど)を覆してはいけない
・効果的な活用にカルチャーとしての「透明性」は重要である。透明性なしには従業員からの賛同も得られず、有益な情報は得ることが出来ない。すなわち、従業員との信頼関係を築く必要性があり、①何のためにデータを取得するのか、②取得した結果どうだったのか、どう活用するのか、③実際にどんなアクションを行ったか、④その結果どうなったのか、「透明性のあるデータ活用・管理体制」が必要である。
・データを扱うHRが「データ取得活用プロセスで従業員がどんな認知をするか」、個人情報データに捉える考え方やサーベイの実施そのものもEXの一部であることを理解しているか否かによって、この解釈は異なるであろう。
最後まで読んでいただき有難うございました。
ご参加された方は社内レポートなどの参考にして頂ければと思います。
著者:松澤 勝充
神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶEvery HR Academyを展開している。
保有資格:
・SHRM-SCP(SHRM)
・Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
・Global Professional in Human Resources (HRCI)
・The Science of Happiness(UC Berkeley)、他