いよいよ本格的に情報教育開始!
2022年4月、高校の「情報Ⅰ」が必修科目となりました。
これにより毎年100万人がIT人材予備軍になるとの試算です。
これまでの経緯
2003年度 始動
「情報A」「情報B」「情報C」のうち1つを学校が必修選択する。
情報A:コンピューターやネットワーク活用の基礎
情報B:コンピューターの仕組みとそれらを活用した問題解決
情報C:情報の表現やコミュニケーション・情報社会について
ほとんどの高校が「情報A」を選択。
2013年度 再編
情報Aを廃止。「情報の科学」「社会と情報」の2つへ。学校が必修選択する方式は変わらず。
情報の科学:旧 情報B
社会と情報:旧 情報C
8割の学校が「社会と情報」を選択。
2018年 改訂(実施2022年から)
データ分析などの要素が追加され「情報Ⅰ」として必修化しよう!
情報Ⅰの内容
1:情報社会の問題解決
2:コミュニケーションと情報デザイン
3:コンピューターとプログラミング(python)
4:情報通信ネットワークとデータの活用
より実践型になったのが特徴
更に先進的な内容を「情報Ⅱ」として選択制に。
情報Ⅱの内容
1:情報社会の進展と情報技術(情報Ⅰの1から発展)
2:コミュニケーションとコンテンツ(情報Ⅰの2から発展)
3:情報とデータサイエンス(情報Ⅰの4から発展)
4:情報システムとプログラミング(情報Ⅰの3から発展)
5:情報と情報技術を活用した問題の発見・解決の探求(新規)
気になるのは問題発見と解決にどれぐらい時間がかけられるかというところ(情報Ⅰのしょっぱなに問題解決を挙げられていることからも重要性が伺い知れます)
既存の試験方式や評定方法を考えるとここに時間をかけられないのかもしれません。ただ、それでいいのでしょうか?試験方法や評定方法を変えることは難しいでしょうか。
純粋にITで一番楽しいのは問題解決ができた時だと思うんです。その感覚を多くの人に体感して欲しい。そして教師の皆さんには問題解決に対するアプローチの多様性(個性)を育むことも意識して欲しいところです。
情報Ⅰにも情報Ⅱにも問題解決があります。それぞれ中身を見てみるとこんな感じ。
情報1
・2,3,4へ結びつけるための導入
・情報やメディアの特性
・問題の発見・明確化と問題解決の流れ
・ブレストやPDCAといった手法
・情報発信によるリスク、セキュリティ
・座学による問題解決
情報Ⅱ
・より実践型
・AIに関する内容もある
・プロトタイピングを用いた「学校紹介」
・データ整理をテーマとした「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」
・応用「学校デジタルサイネージ(天気や温度)の作成」
情報Ⅱ楽しそうですね。
情報の活用は問題の発見と解決をするためにやるわけで、そこを理解しないまま単にツールとして修得することで人材が創出されるように見えてしまうんです。
パソコンや情報のツールを使える人は増えるけど、問題を解決できる人はごくわずかという状態になるのではないでしょうか。
ノコギリは木を切るため。トンカチは釘を打つために使うわけでそれぞれのツールは何かしらの問題を解決するためにあるわけですよね。
現状
日本のずれ
googleチーフエコノミストのHal Varian氏の発言(NewYork Times今日の卒業生に送る一言:統計)
私はこれからの10年は統計学者がもっともセクシーなジョブだと言い続けているんだ。冗談ではないよ
その後「統計学者」は「データサイエンティスト」と言い換えられて伝わりますが(ちなみに原文でもデータサイエンティストとは言っていません)これが2009年の発言。既に13年前です。日本では今からそこを必修化し、そういった人材が社会に出るのはさらに先です。既に後手であることは認識しておくべきだと思います。だから駄目と言っているのではありません。
懸念事項
週に2時間の授業でできるのか?
教える項目も多いですし実践型となるとできる人とできない人の差も大きくなります。そこをフォローしながら進められるのか?授業は教科書を読むだけ。課題は宿題。みたいなことになりそうですよね。
教える側のスキル不足
一番問題となるのはここではないでしょうか。ただ一方で我々のような専門家に門戸を開いて頂けるととても嬉しいのですが、難しいのかな。。
民間企業も支援に(ベネッセ)
学習塾や教材販売をしている企業にとってはビジネスチャンスですよね。元SEがそういうところに就職するという流れにもなるし、当社としても何かしらお役に立てるのではないかと感じています。
今後の流れ
2025年度の大学入学共通テストに「情報」が追加
基本的には理系・文系問わずということのようですので、
・「英語」「国語」+「情報」
・「数学」「理科」+「情報」
を利用する大学も出てきそうですね。国公立は5教科型から6教科型になるのか?それとも副教科扱いなのか気になるところ。
企業に素地ある人財が入社してくる?
ある程度スキルのある人材が入ってくるのは良いことだと感じます。一方で例えば英語のように学校で習うけど話せる・使える人ってどれぐらいいるの?と考えると疑問です。
自発的に英検やTOEICなんかを取っている人は別でしょうけど、学校の授業だけで話せる・使える人というのはあまり聞いたことがありません。
先輩社員側の知識・スキル不足が問題に?
現在行っている解決方法が過去のものになることは間違いないでしょう(エクセルとかマクロとか)ITスキルの進歩はどんどん加速しています。一方で何をどう解決すべきかというところは知識と経験が必要なところです。
これまでのやり方にこだわらず新しいやり方とそこにかかる「リソース」と「得られる効果」つまり費用対効果をバランスよく考えられる人材を育てる意識が先輩社員には求められます。また若手の方もそういった人材になる意識が必要です。
これらはアドラー心理学でいうところの「共同体感覚」「上位コミュニティーへの貢献」と一致します。自分の考えとコミュニティの存在意義をバランスよく考え、行動できるかどうかが今まで以上に重要になると思います。
これからの情報社会で真に求められる人材は、課題を発見し、本質を見極め、解決法を創り出せる人。そしてそれをITで実現する人だと強く思います。
本内容に関しては2022年4月8日朝10時からのスタエフ生配信で話す予定にしています。皆様のご意見やご感想をレターやコメントでお送りいただければ励みになります。
更に知りたい方は文部科学省のHPもご覧ください。
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