思いのままに (140字小説+エッセイ)
風の色、どうしよう。筆が止まった僕に、「香りの元になったものの色にしたくなるのよね」と、君の声がこだまする。形を示さずとも風を感じられる絵にと、躍起になっていたかつての僕を救ってくれた言葉。風のイメージではないけれど、君への誓いを立てるこの絵では、赤い薔薇から線を描くことにした。
少し前まで、息子はクーピーやクレヨンでよく絵本に落書きをしていた。
それも、赤、黄、紫や黒といった色でグルグル、グチャグチャとしていたものだから、最初は驚いた。
無地のお絵描き帳を渡しても描くとはいえ、絵本の方が気乗りしていたように見えた。
しかし、実家から出てきた絵本にも、私や弟がしたであろう跡が沢山見つかり、そういうものかと気付かされた。
たしかに、絵本かお絵描き帳かなど、子どもの知ったことではない。
真っ白よりも、何か描かれているところへ自分も何か描いてみたい、加えてみたいという意志があったのかもしれない。
色も、認識しやすいとか偶然手に取ったのがそうした色だった、ということかもしれない。
子どもの好きな絵本こそ、絵や文字は見づらくなってしまったものの、思い出の、世界に一冊だけの絵本になった。
絵本には落書きをしなくなり、塗り絵用紙を渡すと、車のタイヤは黒で、その他のものは大抵は赤、ピンク、黄の絵具で塗るようになった。
絵具は箱からよく出すが、おえかき帳に自分から何かを描くというより、他の遊びに使う方が好きらしい。
ただ自由に、したいがままにする。
他人に危害を加えない範囲で、大人にもそんな一面があってもよいのだろうな。
常識にとらわれすぎずに、疑問を抱いたり、普段とは違うことをしてみたり。
それが、これまでとは違う創作につながるかもしれないと思った。
下記企画への参加記事です。
前回の「月の色」も参加したかったのですが、考えている間に締切がきてしまいました…。
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