映画レポ|『サマーフィーリング』人を亡くす波紋のような悲しみ
「お前ひとり死んだところで、この世界は何も変わりはしないさ」
…みたいなセリフを、よく悪役が言っている。
確かに、自分ひとり死んだところで…なんて個人的には思ったりもするが、どんな人でも必ず、どこかで誰かと繋がっているし、影響するものだ。
今回は、人を亡くす悲しみが新たな出会いを呼ぶ『サマーフィーリング』という映画を紹介する。
■あらすじ
■三つの都市を舞台にした美しい夏映画
今作では、ベルリン、パリ、ニューヨークという三つの都市を舞台にして物語が進む。季節はいずれも夏。あたたかでさわやかな美しい夏の風景が見どころのひとつだ。
ただ、物語は物悲しい。ベルリンでいつものように恋人のローレンスと眠っているサシャ。服を着替えて外に出ると、まぶしい夏の風景だ。職場で働き、「また明日」と言って仲間たちと笑顔で別れる。そんな何も変わらない帰り道、彼女は突然パタリと倒れてしまう。
“彼女のいない”世界の風景とおだやかな音楽をゆったりと感じながら、少しずつ癒える哀しみをただ眺めていく。
■悲しみは波紋のように薄く伸びる
人の死が影響を与えるのは、生前身近にいた人たちばかりではない。サシャの恋人だったローレンスを通じて、ローレンスの家族、サシャの家族、ローレンスの友達、その友達の友達、同じ街で暮らす見ず知らずの人…遠いところにも、少しずつ少しずつ影響していく。
彼がいる。それだけでいつものパーティの雰囲気が少しだけ陰る。出会うはずのなかった2人が出会う。サシャが残した波紋は、薄くも遠くまで広がっていく。
■彼らを天国のサシャが見たのなら
私が気になったのは、徐々に悲しみから立ち直っていく恋人を、もし、天国のサシャが見たのならどう思うのだろうということだ。
恋人が泣いている。恋人が少しずつ前を向きはじめる。恋人が新たな出会いをする。恋人に、新しい恋人ができる…。
自分に置き換えて考えると、恋人が悲しむのも、孤独なままなのも、立ち直ってしまうのも、全部とても寂しい。わがままな考えではあるが、“自分の干渉できない世界が徐々に変化していく”ことは恐怖だ。
そんなことを考えていたら、ただの傍観者ではなく“天国のサシャ視点”で私はこの映画を観ていたことに気がついた。
こんな想いをするならまだ死にたくない。そう願うばかりだ。
■まとめ
美しくも、どうしても悲しい雰囲気が終始拭えない映画であった。私も、これから何度も誰かの死の影響を受けるだろう。なぜなら、人は必ず死んでしまうのだから…。
せめて自分より若い子の死は見たくない、なんて、つい年寄りくさいことを考えてしまった。自分が死ぬことで与えてしまう影響を考えたら、もう関わった人全員を私が看取るしか道はない…!
永遠の命を欲する目的ができてしまった。
こうして人は闇落ちしていくのか…。ともかく、私の大切な人たちは、どうか私に看取らせてくれ。もちろん、なるべく長生きしてね…。