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【詩】東京駅


本当のことを言って嘘をついた
嘘をついて本当のことを言った
ヘッドフォンからはスネアとキック
(感覚器官-デバイス)(肆)



鈍感な聴覚がわたあめの上に着地した
      「これはサーカスなのよ.......」
「わたし」を操作する不条理;;
不条理を隠蔽する不合理
あの虹はこの嵐の向こうに
実存を求めてはカントに否定された
(ストーム、ストレイシープ、滞留)
純粋は現代によってコラージュされ中心を喪う

(くやしい)


あれだけ死にたくてどうしようもなかったがとうに過ぎ去って
(わたしはいま秋に包まれている)
その中間にはミルフィーユ状に幾層もの不可視な断絶が鋭く走り
(わたしと秋との距離が遠い)
その色彩の無際限がモノクロを恋求める
色移りしていく木々の表情に嫉妬する単純な海が
(青色は東京に踏み潰されて死んだ)

<p>死ねないから殺して</p>


東京の土をふアスファルトを踏んだ彼の足音が街の雑踏に吸い込まれてゆく間断なく
「ここではピアノが弾けないのね」
(秋)



彼は突如ふいにこわくなり晝間のラブホテルへ遁げ込む
HOUSEの肆つ打ちがなほBPMを上げてゆく
工場内で廻転する歯車の隙間から漏れる陰と陽が高速で展開させられて、
それはオーガズムに達した
(※注1.)



彼はもう何もわからない
《        》
間延びした諦念と希死念慮はネオ・リベラリズムによって一息にシュレッドされる
             (かなしいね。)
「えーっ  まもなくぅ東京駅ぃ 東京駅ぃ


                                                               


(※注1.)
「あまり資力のない者たち、あるいは長すぎた反省に倦み、出来合いの方策に身を任せる気になっている者たちのために、日本人が性のために設け、『ラブ・ホテル』と呼んでいるような幻想的な迷宮がなぜ存在しないのだろうか。もっとも、日本人の方がわれわれよりも自殺に通じているというのは事実だが。
 諸君に東京のシャンティイー(パリの北方にある美しい城館)に行く機会があれば、私の言いたいことがわかるだろう。そこでは、ありうべきもっとも不条理なインテリアに囲まれて、名前のない相手とともに、いっさいのアイデンティティから自由になって死ぬ機会を求めて入るような、地理も日付もない場所、そうした場所の可能性が予感されるのだ。そこで人は何秒、何週間、あるいは何ヶ月におよぶかもしれない不確定な時間を過ごすだろう。逸することができないと直ちにわかるであろう機会が、絶対的な自明さをもって現れるまで。その機会は、絶対的に単純な悦びという、形なき形をもっていることだろう。」
(ミシェル・フーコー「かくも単純な悦び」)


【参考文献】
1.ロラン・バルト『表徴の帝国』ちくま学芸文庫 (1996年11月)
2.ミシェル・フーコー「かくも単純な悦び」『ミシェル・フーコー思考集成 8』所収 筑摩書房(2001年9月)

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