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【短歌一首】 墓碑に名の数増し夏はまた巡る肩にとまれるバッタは誰ぞ
墓碑に名の
数増し夏は
また巡る
肩にとまれる
バッタは誰ぞ
子供の頃、大家族の中で育った。
親兄弟、祖父母、兄弟姉妹、叔母、叔父などが一軒の家に一緒に住んでいた。その他にもひっきりなしに多くの親族や親戚や知り合いが出入りしていたり、一時的に住んでいたりした。
いつも自分は末席中の末席のような存在で、家の中や庭や外を一人でぶらついていた。そして色々な大人から声をかけられたり、遊んでもらったり、手伝いをさせられたりしていた。
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母親は子供があまりにもいろいろな大人としょっちゅう会話をしたり、一緒にいたりすることを心配していた。それぞれの大人の価値観や教育観などが子供に影響したり子供を混乱させたり、子供が知る必要のない大人の事情などが子供に入り込み、子育てや教育が一貫しなくなるのではないかと心配していた、と大人になってから母から聞かされた。
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それから半世紀以上の間に、次々と人が減っていき、今やほとんど残っていない。平均寿命よりもかなり手前で亡くなった人がとても多い。そしていつの間にか末席中の末席であった自分がお墓を継ぐことになってしまった。
子供の頃は法事や墓参りの意味も全く知らずに、何も思わず無邪気に、ただ祖母の作ったおにぎりを食べるのと、バッタや蝉やコオロギを取ったり親戚のたくさんの子供達と遊ぶのを楽しみに墓参りについて行ったな。
お盆の頃にはそんなことがよみがえる。
猫間英介