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【短歌一首】 十八のふたり車で乗り込みし浜辺に今日もわだち残れり
十八の
ふたり車で
乗り込みし
浜辺に今日も
わだち残れり
短歌はノスタルジー。
鎌倉の材木座海岸。
18歳で免許をとった直後の5月半ばに、知り合いから古い車を借りて彼女と二人、ドライブをした。
久しぶりに訪れた材木座海岸は、何十年も意識の下に押さえ込んでいたことをたくさん引き摺り出してくる。
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海岸線に沿った国道134号からどうやって入れたのかよく覚えていないが、間違って材木座海岸付近の側道に下りてしまい、そこから材木座の砂浜に車で乗り入れてしまった。 今は側道も見当たらず簡単に入ることはできそうもないが、おそらく当時も砂浜への乗り入れは一部の許可された車両以外は禁止されていたと思う。
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国道134号の側道から材木座海岸の砂浜に車で入ったは良いが、砂に車輪を取られて車がスタックしてしまった。 折悪しく、雨が降ってきて、それがだんだん強くなり、やがて雨と窓の曇りで窓から外がほとんど見えなくなってしまった。
二人で黙ったまま、外もぜんぜん見えない車の中で、しばらく雨の止むのを待っていた。もしかしたらそのうちに波が満ちてきて車が水浸しになったり流されたりするのではないか、ずっと砂から出られずにレッカー車を呼んで引っ張り上げてもらわなければならなくなるのか、などと心配ばかりが膨らんでゆく。
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事故や災害のリスクへの心配が渦巻く中、18歳のガキにとって何といってもキツイのはせっかくのドライブデートが台無しになりそうな気配。 一緒にいる相手には本当にすまないな、カッコ悪いな、みっともないことになったな、俺のこと相手はどう思っているだろう、などといろいろな思いが頭の中をぐるぐると回っていた。本当に馬鹿な18歳。
雨が止んだ後、近くにいたサーファーのお兄さん、お姉さんたちに頼んで車を押してもらったり、車輪の下に板を入れてもらったりして、何とか砂から脱出することができた。地元の漁業関係らしき人たちからは随分と怒られたり、笑われたりした。コンプライアンスが厳しい今なら、間違いなく警察沙汰にもなり、親にもどやされていたことだろう。
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砂浜を歩いていると、車の轍を発見した。 まさか自分と同じように間違って砂浜に入り込んだ車のものではないだろう。 多分、砂浜の安全を監視するための車両か何かのものと思われる。
1980年代前半の車(しかも車式は1970年代の中古車)には、今では当たり前のパワーステアリングも、パワーウインドウもない。 砂にタイヤが埋まった車は、ハンドルも自分の力ではほとんど切れない。4輪駆動でもないからアクセルをいくら踏んでも砂を巻き上げ空回りするばかりだった。
今思えば、本当に無謀な迷惑行為。困った18歳。あの時、事故とならずに、警察沙汰にもならずに無事に脱出できたことに改めて感謝。 脱出をサポートしていただいたサーファーの方々、本当にありがとうございました。
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何十年も経った今でも、思い出すと恥ずかしくて叫びたいような気持ちになってくる。冷や汗が溢れ、呼吸が浅くなり、心臓がドキドキしてくる。材木座の潮風や波音は自分にとって思い切り危険だ。
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ときおり、海から突風が吹いてきていたが、そのうちに海風がどんどん強くなってきて、海水と砂を巻き上げて煙りながら陸に向かっていく。今なら自然を侮ることは決してないが、あの頃、なんも分かって無かったな。
思い出に浸るのはここまでにして、そろそろ引き上げよう。
猫間英介