【短歌一首】 古の切り通しの上灯り見ゆ騎馬武者ならぬ酒屋の鉄馬
鎌倉時代からある鎌倉中心部の扇ヶ谷と北鎌倉側の山ノ内を結ぶ「亀ケ谷坂の切通し」。切り通しとは山などを切り開いて通した道のこと。
鎌倉を訪れた時にはよく通る坂だが、暑い季節に通るのは初めて。
鎌倉は三方を山に囲まれ正面が海で、鎌倉時代に敵を防ぎ味方を守るのに適した天然の要害と言われている。 その山を切り開いて鎌倉には外部と繋がる7つの切り通しがあるが、その一つが「亀ヶ谷坂(かめがやつざか)」の切り通し。亀も登れないくらい急であることからついた名前とのこと。
亀ヶ谷坂は鎌倉時代からの重要な軍事、経済ルート。ここを通るたびに、鎌倉時代にはこの道を馬に乗った武士が通ったんだろうな、源義経は通ったのかな、などと思いをはせる。
いつもここを通る時にほとんど人に会うことがない。特に、今回は暑い時期で木々が鬱蒼としているので、吹き抜けていく風が起こす葉擦れの音が怖いくらい大きい。
切り通しの途中の急峻な斜面には、いくつかの少し朽ちている木製の階段がある。
上の方を見上げても一体どこにどのようにつながっているのか全く分からない。途切れているようにも見える。
それにしても吹き抜ける風と葉擦れの音以外全くしない。どこからかカシャカシャと甲冑の擦れる音がしてきたり、茂みの中から弓矢がいられたり、馬の蹄が聴こえて騎馬武者が現れたりするのではないか。
武将や馬に思いをはせていると坂の向こうから灯火が。武者の持つ松明か。
一台のミニバイクが灯りをつけてこちらに向かってくる。 亀ヶ谷坂は原則的に車両禁止だが、この辺りの住人たちに必要な範囲で例外的に車両通行OKのようだ。 これまで何回か酒屋のスーパーカブを見かけたことがある。バイクは現在の鉄の馬。
坂の勾配がかなり急なので、これまで自転車でスムーズに上り下りしている人を見かけたことはない。自転車で一気に登るのは相当キツそうに思える。
秋が深まる頃に、また亀ヶ谷坂をゆっくり歩いてみたい。
猫間英介
鎌倉の短歌を集めました。