【短歌一首】 この夏の永き余炎を全て吸ひ赤銅(しゃくどう)の雲秋分に消ゆ
9月22日(日)は秋分の日。
ようやく少し猛暑がおさまった一日となった。昼過ぎには雨が降っていたが、夕方ごろには雨も止み、秋めいた高い空と雲が現れた。
午後5時半過ぎにベランダで夕涼みをした後に、台所に戻って夕食を作っていた時、ふと外に目をやると先ほどまで水色や青みがかった灰色だった空がピンク色や茜色に染まり始めていることに気づいた。
もう一度ベランダに出てみると、空と雲が鮮やかな橙色とオレンジ色に染まっていた。たかが数分の間に空も雲もここまで色づくものなのか。自然の営みに驚く。
朱色、橙色、薄紫色、オレンジ色など様々な色の雲が、まるでオーロラのような神々しさをまとっている。
あまりの美しさ、荘厳さ、神々しさ、不思議さにしばし圧倒されていた。
別の角度からも見てみようと外に出てみた。 たった1分ほどの間に空も雲も姿形も色もどんどん変化している。
さっきまでの橙色やオレンジ色が、茜色、紫色、群青色、錆色、海老茶色、柿色、赤褐色などに変化している、いや、どんな言葉を当ててみてもその色を表現できそうにない。
しばし雲に見惚れいていると、雲がだんだん溶岩に見えてきた。そうだ、あの火口から溢れ出て固まりかけながら流れている溶岩にとてもよく似ている。
雲は燃え上がる炎のようにも見える。
10分くらいで夕焼けは消えてゆき、街に帷が下りてきた。
本当に素晴らしい、言葉には言い尽くせない、素晴らしい夕暮れだった。
あまりにも美しく、力強く、温かく、涼しく、心を揺さぶられる夕焼けだった。
赤銅色の雲はマグマのうねりや焔のような熱いエネルギーを吸い込んでいるように思えた。この夏の長い長い猛暑、残暑を一気にまとめてさらって取り込んで、秋分の宵闇に持ち去って消えていくように。
明日からかなり涼しくなるらしい。
猫間英介