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【短歌一首】 日の傾ぐビルの谷間を影占めて枯葉巻き上げ疾風(はやて)抜けたり
日の傾ぐ
ビルの谷間を
影占めて
枯葉巻き上げ
疾風(はやて)抜けたり
12月もはや中旬。
日の入りは午後4時半ごろで、3時過ぎごろからすでに夕闇の接近をひしひしと感じる。一年で一番日の短い季節。
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快晴の日は午前中から正午ごろまで日の光も眩しく勢いがあるが、午後2時を過ぎたあたりから日の傾きとともに薄日となり、空気もどんどん冷えてくる。
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日が傾いていく中で高層ビルの立ち並ぶオフィス街を歩いていると、冷たいビル風が落ち葉を巻き上げて吹き抜けてゆく。一層、寒さが身に沁みてくる。
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東京駅付近の林立する高層ビルが生み出すのは、冷たく強いビル風ばかりではない。日の傾きが大きい冬の季節は、高層ビル群が日を遮り、街全体を覆うように巨大な影を落としてくる。
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凍てつくビル風が吹くなか、日向に出ていればまだなんとか気持ちが明るくなのだが、午後になるとあっという間に高層ビル群が作り出す巨大なシェードで、午後2時をすぎる頃には街全体が灰色の日陰となる。
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高層ビルの谷間にいると、はるか上方に日の光を臨みながら、まるで暗く寒い谷底にいるような気持ちになることがある。
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大自然の中でも場所によって寒さの感じ方はいろいろあるが、この巨大な超高層ビル群がひしめくオフィス街の冬には独特の凍てつきがある。 無機質でとても冷たく感じる。
まさにコンクリートジャングルならぬコンクリート氷河。
猫間英介