【短歌一首】 庭園の人に馴れたる白鳥に触(ふ)るな寄るなの神気宿れり
千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館は森に囲まれており、敷地内には手入れの行き届いた庭園もある。
美術館の敷地内の森を散策し、池近くにある手入れの行き届いた庭園のそばに来ると、二羽の大きな白鳥が芝生の上で動いているのが見えた。
二羽は仲良さそうに寄り添ったり、毛繕いをしたりしている。つがいの白鳥だと思われる。
スマホの撮った写真から種類を調べてくれる機能を使うと、一番最初の候補に「コブハクチョウ」と表示された。 クチバシの上のコプがあるからコブハクチョウか、見たまんまのネーミング。
それにてしてもずいぶん人間に馴れているのか、近寄っても全く意に介せず自分たちの行動に集中している。愛想を振り撒くことも逃げることもしない。 人間など全く相手にせず、あえて無視しているかのような雰囲気が漂う。
もう少し近寄ってみようかなと思ったが、人間にこれ以上近寄らせない何かを持っているような気がした。二羽とも全く声を出すこともなく本当に静かに座っているだけなのだが、うかつにそばに寄ったり、触ったりしたら怒ってこちらを攻撃してくるようなオーラがある。
結局、もう一歩は踏み出せずにコブハクチョウから離れた。
帰宅してからコブハクチョウについて詳しく調べてみたら、その判断は正しかったことがよく分かった。気性がとても荒く攻撃的らしい。
子供の頃から目つきが生意気だのなんだとの言いがかりをつけられやすく、しょっちゅう上級生やヤンキーに絡まれることが多かった自分の「野性のカン」?は正しかった。
二羽のコブハクチョウには、「それ以上絶対近寄るんじゃねえぞ、近寄ったらタダじゃおかねえからな。」というオーラが滲み出ていた。
猫間英介
生き物の短歌を集めました。