【短歌一首】 藍染めは触れなば斬らんのアラートぞ矢毒ガエルの水玉の艶
上野動物園内にある両生爬虫類館。
両生類と爬虫類を専門とする施設が上野動物園内の西園にある。
ここには、世界のいろいろな地域に生息するカエル、サンショウウオ、イモリなどの両生類と、カメ、ワニ、トカゲ、ヘビなどの爬虫類がいる。
両生類、爬虫類には、猛毒を持ったもの、極彩色のもの、恐竜や怪獣をイメージさせるものなどが数多くいて、独特の魅力に溢れている。
極彩色の生き物の中でも一際目を引くのが、「アイゾメヤドクガエル」。
両生爬虫類館のアイゾメヤドクガエルは熱帯気候の南アメリカの国、スリナム共和国出身。ちなみに、「ヤドク」とは「矢毒」と書く。一説によると、アメリカ大陸の先住民が、ヤドクカエルの毒を抽出し、矢に塗って吹き矢として狩猟に使っていたことに由来する。 そして「アイゾメ」は「藍染め」と書く。
「藍染め」+「矢毒」とは、なんとも美しく恐ろしい響き。それだけで惹かれるものがあるな。
それにしても派手なコバルト色。
アイゾメヤドクガエルは危険を察知すると皮膚から強い毒を分泌して身を守る。野生のヤドクガエルの毒は、大きな動物も倒してしまう場合があるほど強力とのこと。
アイゾメヤドクガエルに限らす、ヤドクガエル類は、多くが赤や青、黄色などの鮮やかな体色をしている。
生き物の世界ではよく異性へのアピールとして派手な色を保有したり、派手な色に変化したりする場合があるが、ヤドクガエルの場合は、自分が毒をもっていることを敵に対してアピールする「警告色」であると考えられている。
「自分には毒があり、食べると危険である」と周囲にアピールすることにより、外敵から身を守る効果がある。
ヤドクガエルの中に、「モウドクフキヤガエル(猛毒吹き矢蛙)」という危険度マックスそのまんまのような名前のカエルがいるが、このカエルは、自然界で最強と言われる毒素「バトラコトキシン」を分泌し、ゾウを倒してしまうほどの毒性を持っているとのこと。おっそろし!
なお、モウドクフキヤガエルの毒性は、全生物中で最強らしい。4、5センチの鮮やかなイエローの体に、コブラやハブなどの猛毒のヘビよりも強力な毒を有しているとは、自然界は本当に奥が深い。
「触れなば落ちん」という慣用句は、誘えばすぐに相手が応じてくれそうな風情をさすが、ヤドクガエルの妖しい極彩色の美しさには次の言葉がピッタリだと思う。
「触れなば切らん」
「触るな! このカエル危険につき」
猫間英介
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