【短歌一首】 変はらなき物を求めて古里を行けば面影微かに光る
変はらなき
物を求めて
古里を
行けば面影
微かに光る
先日、離れて40年近く経つ、生まれ育った街をぶらついた。
もう建物も道路も、街全体の輪郭も大きく変化し、隔世の感あり。
同じ路地裏でも周りの建物の形や高さが変化し、こちらもより年齢を重ねているので、自分の記憶との合致が得られずに、全く知らないところを歩いているような錯覚に陥ることもしばしばあった。
駅から続く商店街のアーケードのお店もほとんど変わっている。アーケードの屋根も新調されたようで、昔の雑然とした感じは全く見当たらない。以前は色々と細分化された専門店がたくさんあった。小さい頃はよく祖母の買い物にくっついていった。
思いつくところでは、乾物屋、佃煮屋、たまご屋、海苔屋、荒物屋、おもちゃ屋、練り物屋、魚屋、煎餅屋などなど。祖母が一軒一軒回ってお店の人をおしゃべりをしながら買い物をするので、途中までは面白いがそのうち歩くのに疲れて飽きていた。
生家近くの商店街もお店はすっかり変わった。まだ4歳くらいの頃だったか、この商店街の近くの川が氾濫し、商店街も大人の膝下くらいの水が溜まった。その中を祖母におぶられて歩いたことをふと思い出した。
この商店街に住んでいた多くの幼稚園の同窓生は今はどうしているのか。米屋、八百屋、寿司屋、蕎麦屋、洋服屋、文房具屋、酒屋、駄菓子屋、定食屋などの子供達とよく遊んだ。
いつの間にか、当時と変わっていない物はないかな、と思いながら街をぶらつき始める。
幼稚園の頃に肌がかぶれやすく、よく母親と一緒に通った皮膚科の建物がまだ当時の面影全開で残っていた。あまりにも懐かしく、ふと込み上げてくるものがあった。
電車のガード下近くのこの建物もずっと昔からあった。当時、キックボクシングや拳法のジムがあり、横を通ると窓越しにサンドバックを叩いたり蹴ったりする音が聴こえてきた。当時と同じかどうか分からないが、張り紙などから今でも拳法道場があるようだ。
通っていた小学校の校舎や校庭の様子は大分様変わりしていたが、交差点から見る体育館は当時と同じように見えた。マット運動や学芸会や入学式・卒業式などが次々とよみがえる。同時にどんな場面でもいつも先生に怒られていたことも。
そういえば、小学校卒業後に新しくできた校舎の屋上にプールができたので、中一の時に夜に友達数人と小学校に入り込んでプールを視察？していたら、用務員さんに警察を呼ばれたことがあった。
警察官に、自分達の在学中にはなかったので是非一度見たいと思って入ったと無邪気に説明したら、一応注意はされたが許された。乗ってきた自転車が盗難自転車ではないかというチェックはされたが。
幼稚園や小学校の頃によく遊んだ友達の家がまだ当時の雰囲気で残っていた。今は誰が住んでいるか不明だが、建物はほとんど変わっていない。
小学校の頃に学校が終わると毎日のように遊んだ公園。大きな木は当時は添木をされた小さな枝くらいしかなかったが、今や太い幹となった。（でも、この位置では遊ぶ時に邪魔じゃね。） この公園のブランコや砂場や山や遊具で、自分の運動神経の9割くらいが育まれたといっても過言ではない。
小学校1年の時に、友達が思い切り漕いでいたブランコから転落して花壇のコンクリートの縁に額を強打して大出血し、遊んだいた仲間たちみんなでオロオロしながらなんとかしなくちゃと思い、みんなで近くの保健所に運び込んだ。（病院ではなくなぜ保健所だったのか不明だが、単に近くにあったからだろう。）保健所のベッドのような場所に寝かされて消毒などの処置をされている時の光景を今でもありありと思い出すことができる。
大きな茂みで中の家がほとんど見えない一角。 驚いた。この一角は全く変わっていない。子供時代に夜などはいつも怖いと思っていてそばを通り過ぎていたが、今でもちょっと怖い。中はどうなっているのか。
茂みのそばにあるこの建物も変わっていない、というか当時よりも植物が生い茂っていのではないか。今でも人は住んでいるのか。
あまりにも変化が早い時代。変わる必要があって変わるもの、変わる必要がないのに変わるもの、変わる必要があるのに変わらないもの、変わる必要がなく変わらないもの、いろいろある。
なかなかこれといった正解などないのだろうけど、住んでいる街があまりにも目まぐるしく変化すると、ときにどっと疲れてしまうことがある。 今住んでいる街も再開発の波を受けて、ものすごいスピードで根こそぎ変わって行く。今度、今の街でも変わっていないものを探しをしてみよう。
猫間英介
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