【短歌一首】 葉桜は影を川面のカンヴァスに落とし緑を水草と溶く
短歌は瞬発力。
東京都内有数の桜の名所である目黒川に行った。桜の花が満開のシーズンは人が溢れているのに、花が散って葉桜の季節になるとほとんど人がいない。だからゆっくり、じっくりと新緑を観察することができる。清々しい空気に新緑が匂い立つ。
橋の上から目黒川の流れを眺めると、川の中でも水草が新緑の季節を迎えており、鮮やかな緑色を流している。水面に映る葉桜の影と水草の緑が一緒になり、水の流れをよりいっそう緑色に染めている。そして、そこに空の青さも映り込んで、植物と水と空が渾然一体となって、緑と青の世界を作っている。
たまたま撮った水面の近影写真を見ていたら、この水面の外観・質感は、まるで油絵のようではないかと気づく。特に、水草が水面付近に漂ってその一部が水面から出ている凸凹感が、まさに油絵の絵の具を塗ってエッチングをかけているかのよう。この瞬間を歌で切り取りたい。
空の青さと川の壁面に映った桜の影が涼しげ。中の橋の朱色も良いな。
それにしても桜の花が散った後の目黒川はここまで空いているのか。
静かな時間の中で、葉桜と水草の生命の躍動を感じる。
新緑の目黒川も本当に素晴らしい。
猫間 英介