【短歌一首】 池を打つ雨の波紋は雷の兆しと去れるベンチの老爺
JR中央線・総武線の吉祥寺駅からすぐの井の頭公園。
井の頭池を散歩していると、ごくたまに頬や髪に雨の雫らしき水滴が触れるのを感じた。特に傘をさすこともなく池の周りをぶらつく。
池の水面を見ると、雨の雫が小さな波紋を作っている。波紋の数はまだまだ少ない。実際に歩いているときに雨を感じることはまだほとんどない。
池を取り囲むようにして木立があるので、少しくらいの雨が降っても木々の茂みが天然の傘となってくれる。雨の雫が少しずつ数を増しているが、その粒が木の葉に当たる音を心地よく聴きながら、傘をささずに散歩を続ける。
そうこうするうちに雨がだんだん強くなってきた。ふと池の向こうの橋に目をやると、歩いている人たちはみんな傘をさしている。 こちらはまだ木々の茂みに守られており、傘をささずに池の水面を観察。
橋の上を歩く人の数もめっきりと減った。雨がかなり強まってきたので、いよいよ傘をさすことにした。だんだん池の景色が雨で霞んできている。
さっきまで池の周りのベンチには老若男女多くの人が座っていたが、どんどん席を立って歩き始める。いよいよ木々の葉叢では雨がしのげなくなってきたということだろう。
一人の公園散歩の常連らしきお爺さんがポツリと独り言のように、いや周りに聴こえるように言ったのかもしれない。
「これから雷が来る。池に落ちる雨を見りゃわかる。」と。
ほほ〜う。そうなんですか。お天気予想の達人やね〜。と心の中で感心。
その後しばらく公園にいたが、爺さんの雷予報のことはすっかり忘れていた。(ということは雷来なかったんじゃね。)
猫間英介