【短歌一首】 ギンレイを名画は待てり時来れば嶺また雪の銀に輝く
JR飯田橋駅からすぐの軽子坂(かるこざか)の途中に、「名画座ギンレイホール」が入ったビル「ギンレイ シネマックス」がある。
ギンレイホールは、1974年にスタートしたいわゆる名画座。名画座とは、一般的にロードショーが終わった映画の中からセレクトして2本や3本立てで上映する映画館のことを指す。一回の入場で、複数本の安い価格で楽しめるので、昭和の頃はどの街でもよく見かけた。
このギンレイホールには、高校生の頃から随分とお世話になった。ここで、日本・アメリカをはじめ、アジアやヨーロッパの映画作品などをたくさん観た。
ギンレイホールのある軽子坂は、同じく飯田橋駅からすぐの神楽坂商店街を1ブロック隔てて並行して走っている坂。時代変化の波で、軽子坂周辺のお店や建物も、隣の神楽坂と同様にどんどん新しく入れ替わっている。ギンレイホールの入っているギンレイシネマックスのビルも軽子坂ではかなり古いビルの部類に入っている。
しばらくギンレイホールに来ていなかったが、久しぶりにビルの前を通ると「閉館のお知らせ」の紙が掲げられていた。 令和4年(2022年)11月27日に閉館されたとのこと。 昔通い詰めた懐かしい映画館がなくなってしまうのかと感慨にふけっていると、掲示の下の方は移転計画の予定に言及しており、営業開始の日程等が決まったらお知らせします、とあった。ぜひ復活してほしい。
さっそくギンレイホールのホームページで確認すると、「移転再開につきましては交渉継続中でありますが、現時点では詳細の公表に至りません。」とあった。難航しているようだ。
インターネットの時代になっても、映画館でみる映画、特に名画座でみる昔の映画は最高に好きだ。どうか続いてほしい。
ギンレイシネマックスのビルでお世話になったのは、名画座ギンレイホールだけではない。同じビルの地下にある「くらら劇場」。ここは昭和の言い方で言うと「ピンク映画」(成人映画)専門の名画座。 (まだ成人ではない)高校生の頃にも何回も行った。
ギンレイホールの入口は軽子坂に面しているが、くらら劇場の入口は路地裏の非常に狭く小さな入り口から地下に降りていく。高校生で初めて行ったときにはその暗さと独特の怪しい雰囲気に随分とビビったものだった。 くらら劇場の方は、ギンレイホールよりもずっと前に閉館したようだ。
ギンレイホール(&くらら劇場)には映画を通じて、特に少年時代、青年時代にたくさんの素晴らしい時間を過ごさせてもらった。本当にありがとうございました。
ギンレイ=銀嶺とは、「雪が降り積もって銀色に輝くみね(広辞苑)」。
再びギンレイホールが輝くことを心待ちにしています。
猫間英介
軽子坂の一本となりの神楽坂の短歌