【短歌一首】 斑紋は錦の御旗王蛇なるニシキヘビには逆らふ者なし
短歌は動物観察セラピー。
世界で最大の大きさを誇るヘビの種類が「ニシキヘビ科」に属するヘビたち。
上野動物園の両生爬虫類館にいるニシキヘビは「ビルマニシキヘビ」という種類。
ニシキヘビ科には、世界最大の長さや重さを競い合っている、「アミメニシキヘビ」や「アナコンダ」も含まれる。両方とも最大10m近くなる。非公式にはもっと大きな巨大ヘビ伝説のような記録もある。このビルマニシキヘビは4〜5mくらい。
ニシキヘビ科のヘビのことを「王蛇」(おうじゃ、おうだ)と呼ぶらしい。王蛇には王者の響きあり。卵の時や体が小さい時期は別として、ある一定レベルまで大きくなったニシキヘビは、自分が棲息している地域においては、事実上ほぼ天敵なしの無敵。ヘビの王様であり、密林の王様のような存在。
タカ、ワシ、トラ、ワニなどがニシキヘビの難敵として挙げられることがあるが、それとて実際にはよほど特殊な状況でもない限り、お互いに攻撃を仕掛けることはまずないと思われる。大きくなったニシキヘビは密林のトップに君臨している。
そうすると、ニシキヘビの模様の「斑紋」は、まさに「錦の御旗」みたいなものである。誰も逆らえない、美しくもおっかない最強の旗。ニシキヘビに楯突く者はみな朝敵とみなされ討伐されるかも。
ニシキヘビには毒はないが、大型で筋肉が発達しており、獲物を締めつけて窒息死させた後に大きく口を開けて丸呑みをする。 ほとんどは小型の哺乳類などを捕食しているが、大型のものでは小型の豚やヤギを絞め殺し、時間をかけて丸呑みするものもあるとのこと。丸呑みするとヘビの体は風船のように何倍にも膨らむ。
日本にも昔から大蛇伝説のようなものがいろいろあるが、日本にはニシキヘビのような大型のヘビは棲息していない。 いるのは、シマヘビ、アオダイショウ、ヤマカガシ、マムシ、ハブ(沖縄など)などで、最大のアオダイショウでも3m以下。
日本でも、ときおり、ニシキヘビが世間を騒がせることがある。飼育放棄され捨てられたり、管理不十分で逃亡したりと、ニュースなどで発見され捕獲されるまでの地域住民の緊張や警察・消防などの捜索活動が報道される。
気候変動による温暖化により、日本の気候も随分と亜熱帯化しているように思える。都市部では廃棄した食物など豊富な食料などもあるし、逃亡したニシキヘビが生存し続けることへの障害もどんどん低くなっている。
もし、散歩中に路地裏や公園でニシキヘビに遭遇したら、いくら動物好きの自分でも最初はびっくり仰天して多分足がすくむだろう。自然界で敵なしのニシキヘビが日本で繁殖したら、それこそ日本の生態系が大きく変わる恐れがある。いわば日本国内の自然界の食物連鎖の頂点に君臨することになる。
ニシキヘビが悪いのではなく、飼育放棄したり、管理時不十分で逃亡されてしまったりと、これは人間の勝手な、いい加減な行動によるもの。 王蛇ニシキヘビの最大の天敵は「人間」なのだろう。
猫間英介
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