【短歌一首】 潮溜り覗けば深き蒼たたへ水中都市に吾を誘ふ
短歌はフォビア(Phobia=恐怖症)軽減セラピー。
幼いころから海に入るのがとても怖かった。なぜそうなのかは自分ではよく分からなかったが、とにかく家族で海に行ったときも他の兄弟たちは海に入ってはしゃいでいるのに、自分は怖くて入れなった。
そんな私を不憫?に思ったのか、よく祖母が砂浜に穴を掘って海水をためてくれ、その中に入って「僕の海」と言って私が喜んでいたと後から何回も聞かされた。小学生の頃にはプールで泳ぐのはかなり得意であったのに、海に入るのは相変わらず怖かった。
その影響が残っているのか、大人になってからも海そのものよりも、磯の潮溜まりが大好きで、岩場に行けば必ずといっていいほど潮だまり観察をする。(夏に潮溜り観察に熱中し、背中が日焼けで大変なことになったことあり。)
この日の天気は曇りときどき雨であったが、それでも潮溜まりをいろいろ見て回る。潮溜まりには、イソギンチャク、小魚、カニ、エビ、貝、フジツボ、ナマコ、海藻、などが共生しており、一つの世界を構成している。間口は小さい潮溜まりでも水深が3、4メートルあるものもあり、まるで水中の街、都市、一つの小宇宙のよう。
稚児が淵で、岩と岩の狭い隙間に外海の大きなうねりが集約されて、ときに2mくらいの高さまで波しぶきが上がる場所がある。修学旅行か遠足か分からないが、制服を着た高校生の集団が面白がってこの岩場を渡っていたが、そのうちの一人がもろにしぶきを浴びてびしょ濡れに。それでも彼らは大はしゃぎしていたが、自然をなめていると命を落とすぞ、と思わすにいられない。(外海恐怖症の私には絶対無理。)
新緑マニアの私を喜ばせる緑がこんなところにも。
子供の頃ほどではないが、やはり今でも海はかなり怖い。でも怖いからこそ、畏怖するからこそ、海は、大自然は美しい(のではないか。) 海を見ていると短歌をどんどん詠みたくなるし、短歌で海を詠んでまた海の恐ろしさ、美しさ、優しさ、厳しさを味わえる。短歌は海をも包み込む。
う~む、しかし、ここまで海が怖くて潮溜まりの方が好きだとか、水たまりが僕の海だとかほざいていると、おのずとある諺が頭をよぎる。
「井の中の蛙、大海を知らず」
猫間英介
この日は磯だまり観察をした後に、江ノ島水族館に行った。
磯だまりの中も、こんな世界が広がっているのかなと思いを巡らせつつ水槽を観察する。