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【短歌一首】 鉄槌の打ち据える音響き出し揺れる路地裏ビルまた一つ
鉄槌の
打ち据える音
響き出し
揺れる路地裏
ビルまた一つ
今、神宮外苑の再開発など、いろいろなところで過剰な再開発が問題になっている。たまに東京の都心部に行くと、どこでも巨大クレーンが立ち並び、超高層ビルの建設工事が果てしなく続いている。そしてしばらくすると、同じような高層ビルに同じような企業や店が入り、その一部はタワーマンションとなって行く。
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再開発は都心部だけにとどまらず、郊外の住宅地でも活発に行われている。例年、年度末の3月には住宅の工事も増えるのだが、それにしても都心部の大規模再開発の縮小版みたいに、たくさんの住宅地や駅前で再開発が進んでいる。
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ごく普通の住宅街にも巨大クレーンや重機が入り、長いスパンでの大規模工事が進む。
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どこの駅前再開発でもだいたいパターンは同じ。駅周辺の1ブロックや2ブロックが丸ごと更地となり、そこにタワーマンションが何棟か立ち、一部はオフィスとの複合ビルとなる。そして、駅前に昔からあった馴染みのお店は姿を消し、全国区の名前の知られたお店が次々と入ってくる。
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大規模な駅前再開発は最低でも3年くらいかかっている。その間の工事プロセスを取り仕切るための建設会社の仮オフィスと工事関係者の宿泊のためアパートなどの施設も建設敷地内に建てられる。なお、再開発が終わるまでの数年間はお店も極端に少なくなりかなり不便を強いられる。
よく使っていたあるお店の案内には、「新店舗ができるまでの期間は、是非、○○駅店をご利用ください。」と書いてあったが、○○駅って4つ先の駅じゃね、と思わず苦笑。
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都市部の再開発も、駅前や住宅地の再開発も、生活がより便利になったり、地震や台風や洪水などの自然災害に強くなったりするメリットがあることは分かる。
それでも、現在の再開発の多さ、規模、頻度、スピードはときに行き過ぎなのではないかと違和感を拭い得ない。
自分の住み慣れた街、よく行く場所や好きな場所が、ものすごいスピードで根こそぎ変わってしまうと、なかなか気持ちも体もそれを受け入れついて行くことができない。
今、当面の困ったことは、騒音と振動と、工事現場やタワーマンションを吹き抜けてくる強風。 特に、巨大な鉄杭を地中に埋め込む時の音の波動と地鳴りにも驚く。家の窓が鳴ったり、体に振動が伝わってくることがある。ちと、怖い。
(そういえば、この間、工事現場に差し掛かる角で、おばあさんが突風で数メートルよろよろと流されていた。)
猫間英介