【短歌一首】 サル山を見る人間を猿見つむ所詮変はらぬ霊長類と
短歌は動物観察セラピー。
上野動物園でサル山に行った。蒸し暑い天候だったせいか猿たちはあまり活発に動かず、サル山全体に割と静かな時間が流れていた。
サル山には多くの人間が群がって見ていた。 猿がたまに人だかりの方をじっと見つめる。
威嚇的な様子で見る者、物欲しそうに見る者、悲しそうな困ったような目で見る者、何か企んでいるような目で見る者、などさまざま。
猿の目には人間はどう映っているのだろう。 サル山に群がって見ている人間こそが、実は猿に見られているのかもしれない。
子供の頃になぞなぞで、「動物園で一番多い動物は何でしょう。」という問題があった。答えは、「人間。」だったな。 確かに、動物から見たら、蒸し暑い動物園の中、大勢で騒ぎながら蠢いている人間は、不思議な、ときに非常に迷惑な生き物なのだろう。
猿と人間には共通点が沢山ある。なんといっても、生物的な分類では同じ「霊長類(霊長目)」
ということは、ヒト類はサル目の哺乳類に含まれるから、サルに分類されるってことか。人間はよく「猿真似」とか「猿芝居」とか随分とネガティブな意味で「猿」という言葉を使うけど、これは「人」に置き換えてもその意味は大差ないってことになる。
猿も人間も同じ霊長類なのに、猿は人間に捕まえられてサル山に囲われて、昼間は多くに人間に隅々まで観察される。 猿にとって人間という動物は甚だ迷惑なとてもウザい存在かもしれない。
今、世界中で「動物の福祉」という考え方が広まっている。
3月27日のNHKニュースによると、温暖化による気温上昇に対する猿の暑さ対策として、サル山が取り壊される予定とのこと。
やっぱり猿にとってはた迷惑な霊長類であるヒト類。 上野動物園のサル山は開業から92年というから、こんなに長い期間、人間の都合で猿に不便・不快を強いてきたということになる。
「温暖化の原因作ったのは人間なのだから、今さら「動物の福祉」ってもねえ、身勝手な上から目線じゃないの。まあ、なんでもいいから早よ快適に涼しく過ごさせてくれい」と猿たちは思っていることだろう。
猫間英介