酒蔵インハウスデザイナーのひとりごと
「日本酒のラベルが出来るまで」
今回はこれを書いてみようと思います。
今まで、「読んでくださる方々が<面白い><役に立つ>と、思ってくれたらいいなぁ。」と記事を作成してきましたが、ネタがない月もあるのです。
(ちなみに、月イチ更新で細々とやっています。)
そんなわけで、面白いとか役に立つとかを気にせずに、私(酒蔵のインハウスデザイナー兼広報)が日々どんなお仕事をしているかをお話する月があってもいいかと、気が向くままに書いてみることにしました。
今回がその第1回で、冒頭の「日本酒のラベルが出来るまで」となる訳ですが、たぶん普通のお酒好きさんにとってはどうでも良い話になると思います。気が向いたらお付き合いください。
まずは告知がやって来る。
石川酒造の場合、それは突然やって来ます。
ヒドイ時は商品発売まで半月ない時も。
「○月○日に新しいお酒出るから、ラベル作ってね。」
余裕があっても2、3ヶ月前で、印刷するのに1ヶ月弱かかることを考えると、やっぱりギリギリな感じです。
■実例編「多満自慢 東京の米と水」の場合
9月の中旬に販売しましょう!と決定したのは7月半ば。
お酒の名前も決まっていなかったので、商品の良さが伝わる名前も考えないと!というスタートでした。
なんとなくの方向性を決める。
お酒の味(製法)、販売する場所(どんな方が購入するのか)をヒアリングして、ここを大きく外れないことを基本にします。
この基本で、いぶし銀みたいに渋くしようとか、シンプルでキャッチーにしようとか、銘柄名を強調してブランド力推しにしようとか、スタイリッシュに攻めよう、というなんとなくを決めてみてます。
勤務時間中に、美味しそうな日本酒やワインの素敵ラベルをネットサーフィンしながらたくさん見て、参考にすることも。(これも立派なお仕事です!)
■実例編「多満自慢 東京の米と水」の場合
お酒の中身をストレートに伝える方向で!と決めて、名前も原材料そのままの「東京の米と水」に。名前にチカラを込めたくて既存フォントではなく筆文字を起用し、最初の方向性は「渋め」を予定していたはずなのに…?
基本を元にイメージをかためる。
決まった方向性に沿って、出来上がりの具体的なイメージを考えます。
主に、入浴中、歯磨き中、車の助手席に乗ってる時など、何も考えなくて良い時にぼんやり考えるのが効果的です。
何故か勤務時間中だとイメージが出て来ないことが多くて不思議。
勤務時間中にできることといえば、ある程度のイメージが決まった後に紙質や箔について考えることかも。
■実例編「多満自慢 東京の米と水」の場合
元々、清らかで瑞々しいイメージをインクで表現したいと準備をしていたのですが、千葉に所用で出かけた際、青々とした稲穂に囲まれた道を車で走って(もちろん助手席)、「この風景も伝えたい!」ってなりました。
筆文字の背景の淡い色は上の全てを表しています。
今回は先に使用する用紙を決めていたので、紙の質感も活かせるようにインクの使用を決めました。
素材を集めて実際にデザインをする。
仕上がりがイメージ出来たら、これをカタチにするために素材集めを行います。商品ロゴ、その他必要に応じてキャッチコピー、背景、イラストなどなど。
ある程度そろえたところで、デザイン・レイアウトソフトのAdobe illustrator上で実際にデザインを作ります。
ああでもないこうでもないってして、試しに印刷して、実際に瓶に貼り微調整して、これだ!ってなったらデザイン完成です。
■実例編「多満自慢 東京の米と水」の場合
筆文字は自分の父に依頼。「東京」だけでも10枚以上、いろいろなパターンを用意してくれました。毎回依頼の度に図書館に出かけ、いろいろな書体を研究し書いてくれています。
背景の色部分はイラストボードに適当にインクで色を置いたもの。
こちらで仕上げた第一案が爽やかすぎて秋感がなかったため、インクの色味に後からオレンジを足したり、文字に赤を差し色で入れたりが試行錯誤の結果です。
多満自慢の青部分は昔に描いた油彩を取り込み使用しています。
広く多くの人に、東京の日本酒の良さを知ってもらいたいと思い、英語のキャッチコピーも用意しました。
酒質とメッセージは裏貼りに。
メインのデザインが仕上がったら、正しい販売時の酒質・JANコードなどを確認して、裏ラベルを作成します。
酒質やお酒の説明については食品表示法の他、清酒の製法品質表示基準、未成年者の飲酒防止に関する表示基準などの決まりを守って記載します。(もちろんメインのラベルも遵守しています。)
最後に説明書きのスペースへ、飲み手さんへのメッセージを書いたら出来上がり!
レギュラー化しそうなものは信頼のおける印刷会社さまへ。
季節限定で数量の限られたものは自社で印刷して、スタッフがラベルサイズに合わせてカットしてくれます。
■実例編「多満自慢 東京の米と水」の場合
720mlの表(胴貼り・肩貼り)と裏ラベルのデザインが決まった後、300mlの入稿データも作成。
新しいお酒が出る!と決まった7月中頃時点で、印刷会社さまに「お盆前にはデータ入稿します!」と宣言していたので、無事にラベルも印刷・納品されました。
日本酒ラベルのデザインは、ラベルが貼れない瓶の部分もパッケージの一部だと想像して考えるのがコツ。
円柱状なので見えなくなる部分があるのは基本中の基本。
今回は、瓶の緑がラベルにそのまま染み出たようにつながって、このラベルが違和感なく全体の一部になるようにしています。
と、こんな感じでラベルを作成しています。
今後の予定としましては、明日から10月!ハロウィンの季節じゃないですか!と先ほど気がついたので、急いでハロウィンラベルを作ろうと決意したところです。
ハロウィンラベルは今年もアマビエ様で、来週末くらいには出せたら良いな!と思っています。(これからガンバリマス☆)
本日紹介したお酒
「多満自慢 東京の米と水」が気になった方はこちらからご購入いただけます!(品切れの場合はごめんなさい。毎秋、数量多め・期間長めで発売予定です。)
https://tamajiman.com/SHOP/S-40-1.html
これから発売されるハロウィンラベルも気になる方は、10月8日頃に石川酒造のオンラインショップをCHECKしてみてくださいね☆
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石川酒造公式サイト
https://www.tamajiman.co.jp/
毎月4週目の土曜日とそれに連なる日曜祝日は感謝デー開催日
詳細は公式サイトやSNSでご確認ください。
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