『ダ・ヴィンチ・コード』とは何だったのか?
十数年前、一世を風靡した『ダ・ヴィンチ・コード』。
私も、本は読んだ。
ストーリー自体は、盛り上がりづらいものがあった。
しかしながら、レオナルド・ダ・ヴィンチの天才ぶりに触れるのは不思議な心地よさがある。
一般的に、キリスト教のことを知らなければ、西洋文化は理解できないと言われる。
この本にも、そうした暗黙のメッセージが込められているように感じる。
科学的精神に溢れ、神をも畏れず解剖実験に参加するような万能の天才でさえ、キリスト教を強く意識していたのだ。
本作品によると、「最後の晩餐」にはキリスト教の本質に関わる秘密が隠されているという。
イエスの人間的な部分を描こうとした、当時としては衝撃的な試みである。
宗教権力との対決も辞さない、ルネサンス期の人文主義らしい態度と言えよう。
こうした宗教権力と人文主義との対決の現代版が、『ダ・ヴィンチ・コード』の基本的なストーリーとなっている。
宗教権力の側はオプス・デイなどで、人文主義の側はラングドン教授たちだ。
しかし、ルネサンス期の図式を現代に置き換えるのは無理があったのか、やはり絶妙に盛り上がりづらかった。