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奇書『ドグラ・マグラ』ガイダンス

奇書と呼ばれることが多い、夢野久作の『ドグラ・マグラ』。

精神疾患をモチーフとした、ミステリ仕立ての小説である。見たら「発狂」すると言われる絵巻物をめぐるストーリーだ。

わりと長いので、読破した私が面白かったところを中心に紹介しよう。


序盤は幻想的かつ趣があって面白い。記憶喪失の青年が主人公で、作者の地元の名門・九州帝国大学が登場する。九大教授・若林博士の雰囲気も味があって惹き込まれる。

「…地獄外道祭文」以降、やや退屈だ。


中盤の供述調書は面白い。主人公の一族の歴史や彼の肉親の縊死事件などが、複数の視点で多声的・土着的に語られておりリアリティがある。

その後、ある人物が主人公の前に登場するが、キャラがコミカル過ぎて好きになれない。だが、この人物のクセの強さ・存在感自体が伏線だったことが終盤で判明する。


終盤の「解放治療場」での患者たちの様子や虐殺事件は、さながら神話の世界のような凄みがあった。

一方、問題の絵巻物が古代の出来事に由来するというのは、少々取ってつけた感がある。


結末は、そこまで意外ではない。というのも序盤で、主人公自身がすでに提起していた仮説の一つが真相だからだ。

むしろ、違和感なく納得できる結末と言うべきだろうか。

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