そこまで言うのなら… vol.2 犯罪と暴力シーン
1990年代、暴力シーンは犯罪の原因ではないとする主張が、社会学者の宮台真司氏によってなされた。
猟奇的な事件が起こると槍玉にあげられがちだった、暴力シーンを含む作品を擁護した功績は大きい。
しかしながら、氏が引用するジョセフ・クラッパーによるメディア研究の成果は、暴力シーン批判にも援用可能に思える。
とくに宮台氏も認める、受容環境によっては暴力シーンの影響が大きくなるという話。
それならば、暴力シーンが犯罪の根本原因であろうがなかろうが、ある程度の規制は正当化されうるはずだ。
実際、年齢制限が設けられている作品は山ほどある。
暴力シーンを完全に擁護したいなら、年齢制限全廃を主張していなければおかしい。
いずれにせよ、氏のおかげもあって刺激的な作品が消えずに残っているのだから、足を向けては寝られない。
参考文献
宮台真司(監修)・現代位相研究所(編)『統治・自律・民主主義 パターナリズムの政治社会学』(NTT出版、2012)、p.294