カトリック的な映画
ヒッチコックの『私は告白する』(1953)は、カトリック色の強い作品だ。
原作はカトリック人口の多いフランスが舞台だが、映画ではカナダのケベック州に変更されている。
ヒッチコックは英国出身で、第二次大戦以降は米国で活動した。
彼の作品は国際色豊かなものが多いが、さすがに全編をフランスで撮影するのは敬遠したのだろう。
『私は…』では基本的に、英語が使用されている。
カナダの他の州は英語圏だが、ケベック州はフランス語圏なので本当はおかしい。
これがもしフランスが舞台だったら、もっとおかしいわけだ。
作品の内容としては、カトリックにおける「ゆるしの秘跡」(旧称「告解」)がテーマだ。
教会で信徒から罪の告白を聞くのも神父の仕事なのだが、その内容を他言してはならないことになっている。
作中では殺人の告白を聞いてしまった神父が、しかも濡れ衣を着せられるという二重苦を味わう羽目に。
受難というやつだろうか。
信仰と社会正義とのジレンマが見所だ。
本作品は、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちに人気だったらしい。
やはりテーマがカトリックだと、フランス人好みなのかもしれない。
ちなみにヒッチコック自身、敬虔なカトリック教徒だった。