読了!三島由紀夫「命売ります」
《粗筋》
目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ...。危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。死にたくない―。三島の考える命とは。
《感想》
初三島由紀夫。
なにこれ、めちゃくちゃ読みやすいじゃん。
あの切腹の2年前に書かれた本に対してこんなんじゃ本当はダメなんだろうけど、これが1番素直な感想かな。もっと難しい作品を想像していた。
疾走感?がすごくて本当に読みやすかった。でもその中にも洗練され切った文章力みたいなものが見えて、「こういうことか三島由紀夫」と思えた。
三島由紀夫のあの散り方等々、三島由紀夫という1人の人間に興味が湧いた。
《引用》
ピクニックへでも行こうというように、急に自殺を考えたのだが、強いて理由をたずねると、全然自殺の理由がなかったから自殺したとしか考えようがない。(P6)
それはちっとも支配的なやり方ではなかった。ふしぎな熟練で、すりぬけては、おとこの矜りを少しも傷つけることなしに、蛇が苺の葉のおもてへ出てくるように、男の体の上へ抜け出ているのだった。(P106)
「一体あなた何の商売してるの?」
「そんなこと君に関係ないだろう」
「だって好奇心で聞きたいもの」
「男妾さ。それで分かったろう」
「そう?私にゃとても高くて買えないわね」
「お若い御婦人には無料サーヴィスもいたしますよ」(P128)
(2021/4/29)