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読了!三浦綾子「塩狩峠」
《粗筋》
結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、 人間存在の意味を問う長編小説。
《感想》
こんな切ない話だと思ってなかった。
感想書くとき初めてあらすじ見て、全部書いてあったからビックリした笑
《引用》
こんな時が、信夫の一番楽しい時である。信夫は、いつもこうして本を読む前には、じっと手に持ったまま、何が書かれているのかと想像する。そこには必ず自分の知らない世界や、物語があるのだ。(P193)
「おれはねえ、いまは鉄道屋で一生終わるつもりでいるよ。ふじ子をいい男と結婚させて、おれもおれにちょうど似合った女と結婚して、子供の五、六人も育てて、おふくろを、ああ生きていてよかったなと思わせる程度には親孝行もして…… まあそんなところが、おれの身に合った暮らしというもんじゃないかと思っているんだ」
吉川の賢そうな目を見つめながら、信夫はうなずいた。吉川という人間が、いかにも偉大なる平凡というにふさわしい人間に思われた。だれもかれもが立身出世を夢みるこの明治の時代に、吉川のような言葉をきくことは珍しかった。大学を出て学士になるとか、博士になるとか、また、大臣とか、金満家になろうなどと、夢みる青年の多い時代に、吉川のように口に出していうことは、勇気のいることでもあった。(P241)
聖書で「姦淫するなかれと云えることあるを汝等きけり。されど我は汝らに告ぐ、すべて色情を懐きて女を見るものは、既に心のうち姦淫したるなり」という言葉を読んで、これはずいぶん高等な倫理だと思いました。(P293)
リンゴやミカンを買っていくと、ふじ子は手にとって飽かず眺めた。「ねえ、永野さん。こんなきれいな色をお作りになったのは神様なのね。わたしは神様の絵の具箱がみたいわ。神様の絵の具箱には、いったいどれほどの種類の絵の具があるのかしら」(P342)
(2022/1/25)