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どんな状況でも楽しむ気持ちを忘れずに

新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて2年以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い収束を願っています。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのでしょうか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのでしょうか。コロナもきっと何かしらプラスの面も持ち合わせていると思った私は、主に東アフリカで活動する日本人から、コロナをポジティブにとらえる方法を学ぼうとしています。(ネガティブなイメージを減らすために通常「コロナ禍」と表記するところを「コロナ下」と表記しております。ご承知おきください。)

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第15回目はケニアの首都ナイロビで、ChiQという飲食ビジネスを経営されている中矢晃騎(なかや・こうき)さんです。ChiQでは日本食レストラン3店舗や現地の外資系スーパーマーケットへの総菜などの卸を行っています。

起業家であった父と祖父の影響を大きく受けていた中矢さんは、立命館大学理工学部環境システム工学科を卒業後、経験と知識を身に付けるため、(株)ソフトバンクに勤務、そしてカナダで1年間の留学をします。カナダでは語学の勉強と共に、ニューヨークに出かけて趣味のダンスを磨いていたそうです。アフリカの新興国で起業をしたいという思いからアフリカの情報を集めていると、アジアンキッチンの唐渡千沙さんがインターンを募集していました。そしてルワンダでの3か月のインターンを経て、起業の準備を始めます。飲食店経営となったのは、帰国時に、今となっては仕事の大切なパートナーであるアドバイザーと出会ったことで決まったそうです。

国内にモンバサ港という貿易港があるため、食材の輸入が不可欠な日本食レストランを比較的経営しやすい、新興都市であるナイロビに目を付け、2019年11月に1店舗目を出店します。出店後半年でコロナに見舞われますが、デリバリー需要を上手く捉え、2020年6月に外資系スーパーマーケットへの総菜の卸を開始、2020年11月に2店舗目、高級ショッピングモール「The Hub Karen」に3店舗目をオープンしました。ビジネスの傍ら、シングルマザーの雇用を図ったり、月2回の炊き出しを行うなど、社会活動にも取り組みます。
*ChiQ(ちきゅう)の名前の由来は正に地球のことだそうで、「みんな同じ一つの星に住む兄弟」だという意味が込められています。ちなみに最後の大文字のQは、皆さんご存じ『世界の果てまでイッテQ』から来ているそうです。イッテQのように、冒険心を忘れず楽しくお店を運営していきたいと話されていました。

ChiQ ムサイガ店

そんな中矢さんのコロナは「変化を楽しむことでチャンスをつかむ」時期だったそうです。

ケニアでも他の東アフリカと同様、2020年3月ごろにコロナが本格的になり、門限(早いときは19時)などの制限が設けられました。飲食店にもイートインの禁止などの措置が取られたため、営業時間や運営方法などの変更が何度か求められました。そのため、その都度臨機応変に対応しなければならなかったことが大変だった、と中矢さんは振り返ります。しかし中矢さん自身「どんなことでも楽しめるタイプ」で、日本人としてアフリカでコロナを経験できるのは貴重だと捉えているそうです。中矢さんにとって良かったのは、周りにいるケニア人があまりコロナを気にしている様子が無かったことです。そのお蔭で中矢さん自身も、気持ちが不安定になることはありませんでした。国の政策としても、上記の様な措置は取られましたが、ルワンダのようにロックダウンなど厳格な措置は行われず、外出も問題なくできていたそうです。

しかし、軽かったとはいえ制限は設けられていたため、イートインが出来ない間は、ナイロビ市内の家を一軒一軒回ってチラシを配り、デリバリーの宣伝を続けていました。それによって、通常はずっとお店にいてお客様の対応をしていましたが、ナイロビ中を散歩しながら新しい人との出会いを楽しむという気分転換ができたそうです。楽しみながら新しい顧客も獲得でき、状況の変化がいい方向に転がったと話してくださいました。一方で状況の変化によって経営の面では不安定だったため、毎日必死に細かいことと向き合わなければなりませんでした。何が起こっても成し遂げる、という覚悟をもって始めたため、コロナ下で日本に帰国する、という選択肢は持たず、「逃げ道がない」と思うことで逆にエネルギーが湧いてきたそうです。

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チラシ配りの様子

コロナ下でお店を拡大できた理由を伺うと「ChiQは顧客至上主義であり、高品質・低価格のカジュアルな日本食の店を目指しているからだ」と中矢さんは言います。実際、コロナ下でもオーダー数や売り上げはほとんど変わらず、もともといたお客様がデリバリーに切り替えた感じだったそうです。デリバリーを拡大しているうちにイートインも出来るようになり、新規のお客様がお店にも来てくれるようになります。同時に、コロナ下でもスタッフが必死に働いてくれたため、ここまで順調にこれているんだとも話されていました。

一方で、何かに導かれているような、素敵な縁も、これまでやって来れた理由だそうです。中矢さんが大きなターニングポイントだったと考えているのがルワンダでの出来事です。実は中矢さんはルワンダで大病を患い、渡航ができる状態でもなかったため、ルワンダで手術を受けることとなりました。ルワンダ人の医者から「これまでやったことのない大掛かりな手術だが頑張る」と言われ、半分死を覚悟したそうです。無事に生還し、そこからは第二の人生として、力まずありのままに生きようという考え方に変わりました。手術後の帰国時に今のアドバイザーに出会うことができ、これは何かに導かれていると思ったのだそうです。

仕事もプライベートの延長線上だというくらい楽しくやっている中矢さんは、コロナの影響をさほど受けず、むしろこの制限をバネにビジネスを成長させてきました。そのため、「コロナ後」というものはあまり考えていないそうですが、今後の予定を伺うと「持続可能な会社そして、地域社会のサポート」を実践し続けていくこと、だそうです。 日本食という美味しくて健康にもいい食事をより多くのお客様に提供することで、たくさんの人を幸せにしたいのだそうです。それによって会社としても成功することができ、雇用をうみ、利益の一部は地域社会に還元することも可能です。就職難、失業、シングルマザーの多さ、スラムの子供達の教育、犯罪など、ケニアには問題が溢れていますが、ChiQの事業が持続可能となり、拡大することで、将来的にこれらの問題解決に貢献していきたいのだそうです。

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炊き出しの様子

中矢さんからはどんな状況も楽しむ姿勢を忘れないことで、大変な時期でも苦しむことなく、状況を好転させていけることを学びました。「病は気から」「気持ちの問題」という言葉もあるように、明るい心持ちは大切なのだなと改めて思います。

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