社会人9年目、5回目の転職。
慣れたもので転職も5回目である。
2016年に大学を卒業し、社会人歴は今年で9年目となる。
その間に5回仕事を変えた。
確かに、どんなことも熱しやすく冷めやすい性質ではあるが、仕事において「石の上にも3年」というのはあながち間違っていないのではとも思う。
どの口が言うのだろう。
今回の転職、つまり5回目の転職は大したことではない。1年程正社員として勤めた会社を8月末で退職し、9月から派遣社員の道へ舵を切った。
8月までは音楽関係の会社で広報の仕事をしていた。経験した者からすると、なぜ広報職を「華やか」と表現するのか理解に苦しむほど、現実の業務内容は泥臭いものである。
マスコミを捕まえて自社の露出を1件でも増やせるようコネクションを築き、テレビ局に挨拶回り、ドラマや映像などロケ撮影への対応、掲載実績の確認、イベント対応で土日出勤、新規事業立ち上げ時のメディア対応、コンプラや法務に配慮した公式発表文書の作成、SNS炎上対策。
マスコミや芸能人との絡み、という部分のみを切り取って華やかと表現するのか。時には担当者自身がテレビや新聞に露出する可能性があるため、それを表に出る仕事と言う意味で華やかと表現するのか。
しかし私は広報という職種に適性があった。
広報を経験するのは今回が初めてではなく、数年前にも別の企業で企画・広報職を担当していた。
広報マンに求められるスキルは、対人スキルと柔軟性だと思う。社内外、老若男女問わず会話ができて、フットワーク軽く臨機応変に対応できる人間は重宝される。
私はこれまでに修羅場や試練を人一倍経験してきた。悲しいことに対人スキルも適応能力も並はずれている。
時代錯誤ハラスメント祖母との同居、血迷って大学を休学し料亭で1年間の女将修行、農産物直売所の店長としてアクの強い農家さんやパートさんとの店舗運営、大好きだった夫に肋骨を折られてのDV弁護士協議離婚。どんな場所でもある程度うまくやっていける自負がある。
そんな私の性質からすると適職であることは間違いなかった。
そのため、華やかではなく泥臭い仕事であることは理解しながらも、私は適職という観点で広報に戻ったのだ。しかも今回の広報は土日出勤も少ないらしい。結婚しても続けられそうだ。広報といっても色々あるものだ。
しかし蓋を開けてみれば毎月発生する土日出勤、休みでも震え続ける社用携帯、おまけに半年に1度は新規事業の立ち上げで1週間を超える長期出張が発生する。おいおい、これじゃあいくら適性があっても私のプライベートなど永遠に後回しじゃないか。
彼が私の両親に結婚の挨拶に来てくれるという前日、上司から「休みとはいえ電話には出るようにしろ。帰省しても携帯は持ち歩け。」と言われた時、プツンと糸が切れた。
元々、適職だから広報を選んだだけで、仕事で人生を充実させたいという気持ちもなければ、プライベートを犠牲にしてまで働く気もない。
そうだ、派遣に戻ろう。
私がこの9年という社会人生活の中で最も長続きしたのが、3社目として経験した派遣社員の事務仕事だった。これだけは満期の3年続いた。
事務といっても法務、契約、経理など色々あるが、当時の業務内容は総務事務だった。そのため部署を超えて派遣も社員も満遍なく関わりを持って仕事ができたり、時には急なアクシデントやイレギュラー対応もあり、対人スキルと柔軟性が求められるポジションだった。
同世代も多かったので居心地も良く、毎日定時退社。社用携帯や名刺を持ち歩くこともなく、プライベートと仕事の時間が明確に分かれ、勤続につながる環境が整っていた。
そして満期を迎えた私は同じように事務の仕事で、今度は正社員で働く道を選んだ。当時はまだ何が自分にとって居心地が良く、3年続いたのかなどは分析できておらず、3年間のうちに取得した簿記の資格を活かしたいという短絡的な思考で正社員に転向した。
ここから地獄に転落することとなる。
結論から言うと経理の仕事は全く適性がなかった。経理に求められるのは集中力と確実性、私には徹底的に欠如しているものだった。
会計ツールや社内インフラの整っていない環境で0.01円の誤差に苦しみ、締日に追われ、売上の計上が完了しないと請求書発行に進めないという月末月初のプレッシャー、睡眠がしっかり取れず勤務中に悪影響が出るのが怖いので22:30就寝、ミスを絶対に許さないお局上司。
定時で上がれてオンオフのメリハリがはっきりしていること以外は、全て地獄だった。
結局私は経理の仕事を10ヶ月で辞めた。今思うと辞める3か月前くらいには鬱々と出社し、精神的にバランスを崩した状態だった。
適性の大切さを痛感した。
だからこその適性優先転職が、先述の広報だった。しかし適性があり毎日イキイキと仕事できるものの、プライベートが不自由になり、それはそれで次第に鬱々と仕事をするようになる。
バランスをとった結果の選択が今の派遣なのだ。
雇用形態=派遣だから良いのではなく、業務内容の適正とプライベート時間確保の絶妙な均衡が取れる仕事を手っ取り早く探すのに、派遣は向いているのだ。派遣社員は仕事は派遣先で行うが、雇用に際し必ず派遣元を通す。その為か誤った伝言ゲームにならないよう業務内容が明文化され、従業時間や条件も明確に提示される。
私の9年の経験値で、ミスマッチが一番発生しにくいのがこの契約方法だった。
新卒や中途採用面接では、少なくとも内定を取るまでは“頑張る“必要があると思う。本音では土日は絶対休みたくても“オンオフをはっきりさせたくて”とオブラートに包んだり、広報や営業が得意そうだけどなぜ総務志望なのかと言う理由を綺麗に整えて、時にはわかりやすいように加工して提示する。
某マッチングアプリのように本音を隠した状態で選べるようになれば、もう少し就職におけるミスマッチを減らせたりして。
新卒の自分にかけてやれる立派な言葉など無いが、
ゴールやステップを見据えた“苦しみ“や“耐えどき“は頑張って乗り越える価値があるが、意味を成さない辛さもたくさんある。全てに耐える必要はない。見極めてうまいことやっていこう。