
実写版【推しの子】についてまとめ(1)
若く才能あるキャストを中核に、愛のあるスタッフ陣で、原作リスペクトで拘りを持って作り上げた作品
2024年1月24日に公開された最初のキービジュアルのイメージはヴィヴィッドな色使いもあってコスプレと批判されました。
しかし、実際にAmazon Prime Videoで全話&映画The Final Actを見ての感想は、ほとんどキャストの演技が板についていて、キャスティングが当たっているなということです。そして、作品と自分の役に真摯に取り組む若い役者たちが素晴らしい演技をしているし、彼らはこの作品で得たことを糧にして今後も活躍するのは間違いないですね。
ここから、少しネタバレがあります。
まず、第2話から登場し、すぐ印象が強いのは、原菜乃華さん演じる有馬かなです。原菜乃華さんは、徹底的に原作を読み込んでアニメをトレースするように見て、読んだり見たりするのが辛くなるほど共感したといいます。彼女は、有馬かな同様に子役上がりの経験ある役者なので、なるほどです!今回、憧れていたアイドル役が初めての彼女は喜んでいますが、B小町として3人での4曲の歌収録やライブビデオ風MV撮影、王道アイドルっぽいMV撮影、実際のMステ出演など、本当に貴重な体験だったのですね。時には憎たらしく可愛らしい演技が非常に上手いし、ところどころに潘めぐみさんっぽい台詞回しと声の演技や歌唱が垣間見られるのは、さすが声優経験もあるアニオタですね。B小町ではセンターで、「声が魅力的な特徴」「努力と練習を重ね、パフォーマンスは本当にすごかった」「ダンスもほぼ未経験ながら原作のかな同様ぐんぐん成長し、見ていて鳥肌が立つ」とスタッフたちからも絶賛されるだけのことはあり、原菜乃華さん演じる有馬かなって、それだけ惹かれるキャラクタなんです。
話が進むにつれ、茅島みずきさんが演じる黒川あかねの存在感が増していきます。茅島みずきさんは、原菜乃華さんや齋藤なぎささんよりも、1つ下にも関わらず高身長で声が低く大人びた雰囲気の俳優さん。初めは、アニメの子供っぽいイメージと違い過ぎ確かに違和感がありました。茅島みずきさんの黒川あかねは、石見舞菜香さんの高めの声で可愛いらしい絵のアニメ版(アニメだとプク~とか可愛さが強調されてた)と比較され、暗いと言われたりするように。強調された真面目さも見ていると、徐々に彼女の演じるあかねが板についていることが分かるようになります。特に、アニメと同じような表現には無理がある、アイをトレースするシーンは、表情だけでなく声まで高くし口調を変えることによって齋藤飛鳥さんに寄せる高い演技力を発揮し、CGで目にアイと同様の星形の光をさりげなく入れたことで、素晴らしい見どころになりました。あかねは、アイをトレースした演技が出来るにも関わらず、焚きつけるためにルビーを劇団ララライの拠点に呼んで、アイのことを聞いて演技し、ルビーに演じさせ辞退するシーンも、2人ともがとても良かったですね。
齋藤なぎささん演じるルビーも徐々に板についてきて、撮影順とは限りませんが、ライブシーン以降は成り切っていたし、闇落ち表現も良かったですね。特に真冬の川に入っての撮影は寒くて涙が出たほどでも、やりきっていて『トワイライト』MV(監督:松本花奈)の素晴らしいシーンとなりました。歌は特に、時折、アニメ版の伊駒ゆりえさんに聞こえることがある一方で、原菜乃華さんと似ている部分もあり、B小町のルビーとしてマッチしていました。ライブやMV撮影時では、身長差を埋める厚底ブーツを履いててピョンピョン跳ねるような振り付けを難なくこなしていて、素晴らしいパフォーマンスでした。
あのちゃんは、MEMちょならどう考えるかを念頭に演技したそうで、個性は抑え気味でアニメの大久保瑠美さんに寄せた高い声を使った演技が良かったですね。撮影時以外も、他の演者に対して意図してMEMちょの面倒見の良いお姉さん的キャラを維持していたようで、普段の彼女とは全く異なる態度で後輩たちに接していたのですね。普段陰キャでも陽キャを演じるのは上手いのです。
アクアは、櫻井海音さんがどうしても16歳(映画では18歳役?)には見えないのは仕方ないのですが、演技自体はかなり良かったし成り切りアクアでした!そして座長としての役割もしっかり果たし、自身の撮影がない日も現場に来ることが多かったようで、若い演者たちのモチベーション維持に貢献したようです。
裏方が好きなので、大人たちのハマり役としては、「東京ブレイド」プロデューサの雷田澄彰役の中村蒼さん、アイに関わりアクアの子役時代と初期から最後の「15年の嘘」舞台挨拶まで登場する五反田監督役の金子ノブアキさん、劇団ララライの代表で演出家の金田一俊朗監督役の尾美としのりさん(中村吉右衛門版「鬼平犯科帳」での木村忠吾役が強い印象)、存在感を示していたし、雨宮吾郎役の成田凌さんも素晴らしい成り切りで、いずれもとても重要な役をしっかりと演じていたことが好印象です。
例えば『【推しの子】』は僕がデビュー当時にご一緒した監督で、若いキャストの方々が頑張ると聞いて、これまであまり経験がなかった人気漫画原作の分野で戦ってみようと決めました。原作がお好きな方々の気持ちが痛いほどわかるので、できることならどうにか納得いただけるものを作れないかという想いがありました。 - 成田凌
斉藤壱護役の吉田鋼太郎さんは存在感が強くて、苺プロダクションを畳んで雲隠れした後も暗躍してそうな雰囲気でした。再起した苺プロダクション社長の斉藤ミヤコ役の倉科カナさんはアクアたちの母親っぽい感じはしませんが、敏腕マネージャの貫禄は十分にありました。
とても当事者意識を感じ、リスペクトを持って作っていただけていると感じていた - 赤坂アカ
描きたいテーマがちゃんと伝わって表現されている - 横槍メンゴ
大胆に割り切った部分(本筋に関係ないキャラクタは削る、舞台編はTVドラマ編へ変更、高千穂では撮影しない)もある一方で、細かく徹底した制作を行い、スタッフのやり切った感じと、原作者たちがしっかり関わった上で信頼して任せた、結果の素晴らしい映像作品といえ、構成、撮影や音楽・音響といった面でも見所があります。