
デッドリフト、バウンドさせるか?一回ずつ置くか?
床引きデッドリフトは楽しい。
直訳すると「死の挙上」というだけあってかなりきついが、ほとんどのトレーニーにとって最も高重量を扱うことのできる種目だ。

そのデッドリフトだが、高レップになってくるとどんどんきつくなってくる。
6-8レップなんてやろうものなら、後半には無酸素運動のきつさと有酸素運動のきつさが同時に襲ってくる感覚に陥るほどだ。
さて、そんなデッドリフト。
レップ間は地面からバウンドさせたほうがいいのだろうか?それとも一回ずつ地面に置いたほうがいいのだろうか?
今回は、2019年に発表された論文をもとに【デッドリフト、バウンドさせるか?一回ずつ置くか?】について解説していく。
■バウンススタイルとポーズスタイル
今回は便宜上、バウンドさせるデッドリフトを「バウンススタイル」、一回ずつ置いて行うデッドリフトを「ポーズスタイル」と呼ぶことにする。
地面から数cm浮かせた状態で2-3秒キープする「ポーズデッドリフト」も存在するが、今回の記事で語る「ポーズスタイル」とは異なるものとし、ポーズデッドリフトは扱わないこととする。
バウンススタイル: バーベルを地面から少し跳ね返らせてから持ち上げるスタイル。
ポーズスタイル: バーベルを地面から持ち上げる前に、完全に静止させるスタイル。
■研究結果
・概要
2019年、Krajewski、LeFavi、Riemannの3人は、従来のデッドリフトにおけるバーベルのバウンスの影響をバイオメカニカルに分析する研究を行った。
研究では、20人の男性を対象に、それぞれの最大反復回数の75%の重量で、バウンスとポーズの両方のスタイルでデッドリフトを行ってもらった。
その結果、バウンススタイルではバーベルを最も高く持ち上げるまでの短い時間において、各関節で発生する力がポーズスタイルよりもはるかに小さいことが明らかになった。
特に、股関節への影響が大きかった。
つまり、バウンススタイルでは、リフトの初期段階(ファーストプル)において最大限の力を発揮することができない可能性があるということだ。
・研究の詳細
研究では、関節モーメントインパルス(NJMI)、仕事量、平均垂直地反応力(vGRF)、vGRFインパルス、およびフェーズ時間を2つのフェーズ、すなわちバーベルが地面から離れた地点からピークの高さまで、および上昇全体について計算した。
さらに、バーベルのピークバウンス高さが発生した場所での足首、膝、股関節、および胴体の角度を計算した。
ネット関節モーメントインパルス(Net Joint Moment Impulse、NJMI)
関節に作用する力の総和を時間積分したもの。
簡単に言うと、関節が運動する際にどれだけ大きな力が加わったかを示す指標。
平均垂直地反応力(Vertical Ground Reaction Force、vGRF)
人が地面に力を加えたときに、地面から受ける垂直方向の力の平均値のこと。
簡単に言うと、人が地面を押す力に対する、地面からの反力 の平均値。
・研究の結果まとめ
ネット関節モーメントインパルス(NJMI)…ポーズスタイルが高い
仕事…ポーズスタイルが高い
平均垂直地反応力(vGRF)…バウンドスタイルが高い
vGRFインパルス…ポーズスタイルが高い
フェーズ時間(リフトオフ~ピーク高さ)…ポーズスタイルが長い
関節角度(ピークバウンス高さ時)…各関節の角度が異なる
研究では、バウンステクニックではリフトの初期段階で最大の力を発揮できない可能性を示している。
■バウンススタイルとポーズスタイルの比較
バウンススタイルのメリット
スピードと爆発力の向上: バウンスを利用することで、バーベルを素早く持ち上げることができ、爆発的な力を養うことができる。
神経系の活性化: バウンス動作は、神経系を刺激し、より高い運動出力が出せるようになる。
ボリュームを稼ぐ: バウンススタイルでは同じ重量・回数でも軽い体感で扱うことができるので、トレーニングボリュームを稼ぎやすい。
バウンススタイルのデメリット
関節への負担: バーベルが跳ね返った際に関節に大きな衝撃が加わり、怪我のリスクが高まる。特に、腰椎や膝関節への負担が大きい可能性がある。
フォームの安定性の低下: 高重量を扱えてしまうため、正しいフォームを維持することが難しくなる。
試合では使えない: パワーリフティングの競技においては、バーベルが完全に停止した状態から試技を行う必要があるため、試合と同じ条件でのトレーニングにならない。
ポーズスタイルのメリット
試合と同じフォーム: フォームを安定させやすく、正しいフォームを習得しやすい。パワーリフティングの試合と同じフォームで行うことができる。
高重量の扱いに適している: 1レップごとにフォームを確認して行うことができる。高重量を扱う際にフォームが安定していることは非常に大事。
筋力向上: バウンドを使わず地力で挙げることで、各関節の力を最大限に発揮し、根本的な筋力を向上させることができる。
ポーズスタイルのデメリット
スピードと爆発力の低下: バウンスに比べて、スピードや爆発力は出しにくい。
トレーニングボリュームを稼ぎづらい: バウンスに比べて、レップ数を稼ぐことは難しい。
■結論、どちらを選ぶべきか?
どちらのスタイルを選ぶべきかは、個人のトレーニング目標や身体の状態、そして経験によって異なるが、基本的にポーズスタイルを選ぶべきだ。
初心者: まずはポーズスタイルから始めることをおすすめする。
デッドリフトはフォームの習得が非常に難しく怪我に繋がりやすいため、まずは正しいフォームを習得することが大切。最大挙上重量を更新したい: 1レップのPRを更新するときはバウンドを使うことができないため、必ずポーズスタイルで行う必要がある。
スピードや爆発力の強化orトレーニングボリュームを稼ぎたい: バウンススタイルが適しているかもしれない。ただし、フォームを崩して怪我をしないようにしよう。
どちらのスタイルを選んだとしても、重要なのは、正しいフォームで安全にトレーニングを行い、毎回のトレーニングで過去の自分を超えること。
(タイトルとサムネの元ネタはこちら。)
■おわりに
このnoteは、筋トレを始めたばかりで、しっかり身体のことについて勉強したい人をターゲットに、健康的な生き方に関する情報を論理的に発信しています。
過去にもいろいろな記事を投稿しているので、もし気になったら読んでみてください。
また、記事にしてほしいトピックのリクエストもコメント欄から募集中です。
筋トレについてそこそこ詳しい方や、実際にトレーナーとして活動されている方にとっても、「こんな考え方、こんな表現があったんだ!」という発見になってくれれば幸いです。
また、当noteはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトプログラム等に参加しています。
いいなと思ったら応援しよう!
