見出し画像

エッセイ | ハニージンジャーミルク

食べ物の好き嫌いは少ない方だと思う。嫌いなものは漬物と酢の物。味が濃いものは全般的に苦手だけど、本気を出せば食べられる。

あまり好きではないけれど嫌いというほどではない、でも自分からは絶対に食べようとしない物のひとつに生姜がある。「生姜は体にいいのに」と祖母が言っていたことを思い出す。
生姜風味の食べ物が出される度に、わざわざ味付けせずそのままでよかったのに……と思いながら食べる。こちらはドレッシングなしでサラダを、醤油なしで寿司を、つゆなしで素麵を食べられる人間である。
といっても生姜は魚の臭みをとるにはちょうどいいし、レシピ通りに作らないとどこか気持ち悪いので、しぶしぶすりおろし生姜のチューブを買って使っていた。丸ごと買っても使いきれずに腐らせるのがオチだからだ。

そんな私が昨日、スーパーで生姜を買った。チューブではなく野菜コーナーに置いてある正真正銘本物の生姜。ここ最近ずっと体調が優れず、家族が風邪の時、すりおろした生姜と蜂蜜を牛乳に入れて飲んでいたことを真似しようとした。作り方は知らなかったのでインターネットでそれっぽいものを調べた。

買ったことがないし買おうと思ったこともないので、目当てのものを見つけるのに少々時間を要した。一人暮らしの私では使いきれなさそうな大きさのものしかなかったが、ちょうど安くなっていたのでカゴに入れた。
ついでにレモンティーも飲みたくなってレモンも買った。そこまで好きではないが、身体にいいことは間違いないだろう。お土産で買った蜂蜜はまだまだたっぷりあるし、きっと美味しい。

すりおろした生姜は見た通り牛乳には溶けないし、生姜と甘ったるい牛乳を同時に摂取しているみたいで違和感が残った。だけどおいしいと思えなくもなくて、子どもの頃には食べられなかったワサビや辛子が食べられるようになった感覚を思い浮かべた。飲みやすさを追求するなら生の生姜ではなくてパウダーを入れるのだそうだ。

自分の好きなものだけでなく、健康のことを考えて買い物をするようになったことに、我ながら大人になったものだと感動しながら、どこか寂しさを感じている。1000円あればお菓子を大量に買い込んでいた無邪気さを、どうしても忘れたくない。まだ子どもだと言い張るにはすっかりダサい外見にはなってしまったけれど、心の中にはあの頃の子ども心を抱いていたい。望んだことは何でも叶えられる無限の可能性が広がっているような気がするから。

こちらもぜひ読んでください。


いいなと思ったら応援しよう!