逆風の中を駆けた2024年、2025年はオフェンス強化で飛躍の年に【HYACCAの年頭所感】
2025年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
こうして新年を迎えられたこと、これもひとえにこのnoteを見てくださるような皆さまに支えられてこそだと思っております。昨年一年お世話になった皆さまにこの場をお借りして感謝いたします。ありがとうございます。
まずは簡単に自己紹介をさせてください。
私は、バイヤーが厳選したギフト商品を取り扱うECサービス『HYACCA(ヒャッカ)』を運営するHYACCA株式会社の代表を務めております、木村圭介と申します。
HYACCA自体は2013年にローンチしたサービスになるのですが、2023年11月にM&Aを実施し、『HYACCA株式会社』として新たにサービスを開始しています。
私自身はギフトサービスもECも未経験という状態で、M&Aと共に当社を設立し、代表になりました。
親会社のキュービックではメディア事業本部長を務め、マーケティングを軸に事業を大きくしてきた経験があったので、HYACCAも成長させられるかなと呑気に考えていたのですが、現実はそんなに甘くない。それはまるで修行のように、大変な一年が待っていました。
あまり外部に情報を出してこなかったので、大変そうに見えていなかったかもしれないのですが、正直この一年は自分が社会人になってから一番苦戦した年かもしれません。
未経験領域のM&A
2024年を振り返るには、2023年のM&Aを決めるタイミングまで遡ります。
当時、HYACCAを運営していたのはtoC向けにウエディングのペーパーアイテムを提供している会社でした。結婚式場で紹介されるペーパーアイテムよりも安価で種類も豊富という点を強みとしており、2006年の創業以来ペーパーアイテムで成長し、上場を目指して資金調達も行っていました。
それほど勢いよく成長していた同社に陰りを与える出来事がありました。コロナです。
コロナによって当時の売上は9割減。一方で、上場を目指してヒトモノカネに大きな先行投資をしていた同社は実態よりも図体が大きくなっており、一気に赤字へと転落してしまいます。
その時にペーパーアイテムからリソースの舵を切ったのが、ギフトECサービスのHYACCAでした。
前述の通り、元々HYACCAは2013年に誕生して約10年という運営の歴史がありましたが、入り口はブライダルの引き出物宅配サービスです。
ペーパーアイテムとセットで引き出物を販売することで安く購入できるというメリットもあり、それなりの注文は入っていましたが、メイン事業はペーパーアイテムだったため、そこまで積極的な投資をせずにきたのが2020年まででした。
2020年にコロナが流行してからは、引き出物宅配も縮小してしまったため、一気に結婚祝いと出産祝いという2つのイベントに拡げる形でヒトモノカネを投下しました。
ウエディングとは逆に、結婚・出産という2つの祝い事のECは右肩あがりで成長していきます。理由はコロナによって買い物に出られなくなったり、直接プレゼントを渡せなくなったりして、「オンラインで購入して届ける」という消費が一気に増えたためです。
HYACCAも例に漏れず、サービスは一気に成長していきました。
成長する中で大きな問題点が明らかになってきます。それはキャッシュフローの問題です。
HYACCAは注文があり次第メーカーから商品を直送するモール型のビジネスモデルではなく、自分たちの倉庫に商品在庫を保有して、倉庫から商品を送るモデルのため在庫を抱えないといけません。成長すればするほど、抱える在庫量も増えるためキャッシュフローは苦しくなります。
時代の向かい風によって苦戦したペーパーアイテム事業と、追い風を受けて成長するほどキャッシュフローが厳しくなるギフトEC事業。二つの爆弾を抱えたまま企業運営のコントロールは難しくなっていきました。
ギリギリまで両立させる道を模索していましたが、うまくいく方法を見出しきれずといった時に、私に話が舞い込んできました。
ギフト市場とHYACCAの詳細を聞けば聞くほど、年間10兆円という市場規模の大きさと面白さ、市場の中でのチャンスがいくつも見えてきたためHYACCAに価値を見出し、M&Aを決めてスタートさせたのが2023年11月。
そこから先は自分が代表となって事業を進めていくわけですが、その後はとにかく波乱万丈でした。
想定とは大きくズレたM&A
①コロナ収束とともに逆風を迎えた事業
2023年5年にコロナが5類へ移行し、少しずつ日常が落ち着きを見せる中、HYACCAの業績は向かい風を迎えます。オンライン消費も落ち着きを見せたのです。
オフライン消費を抑制されていた反動もあり、ユーザーの消費行動が元に戻っていく中で、日を追うごとに向かい風は強くなっていく感覚がありました。
②売っても売っても儲からない事業構造
自身が代表を務めて細かい数値を深ぼる中で見えてきたのは「売っても売っても儲からない事業構造」でした。
HYACCAは私がユーザー視点で見ても本当にいい商品を提供していると思いますし、ラッピングにもかなりのこだわりを持っています。
その反面、商品原価、梱包費用、運賃、決済手数料(クレジットカードなどへの支払い)、資材など購入された時にかかるコストが多い。こだわりすぎるあまり、これらコストを合わせると売上に対して90%近くになっていて、どれだけ売っても儲からないような仕組みになっていました。
いいサービスを作ろうとしすぎるがあまり、コスト面も含めて事業を作るということが少しおざなりになってしまった結果、大きな壁が生まれていました。
③自分たちの強みが活きない状態からのスタート
M&Aを決めた時、HYACCAはいわばPMF(プロダクトマーケットフィット)した状態だと思っていました。事業としては完全に黒字化していて、ここから先は私が経験してきたマーケティングや営業によってサービスが成長していく。そんなストーリーを思い描いていました。
しかし、①・②の理由によって事業自体はPMF以前の状態。マーケティングの4PでいえばPromotion領域に強みを持っていた自分たちですが、赤字のプロダクトをどれだけプロモーションしても赤字額が増えていくだけです。
Product(競合に勝てる商品)、Price(ユーザーに支持されながらも儲かる値段設定)、Place(最適な流通チャネル)という、3つの要素に手をつけなければいけません。
冒頭で申し上げたように、私はギフト領域もEC領域も経験がないため、何からどう手をつけていいのかもわからないような状態でした。
逆風の中からの2024年
2023年11月にサービスを請け負ってから、その2ヶ月間でさまざまなことが判明し、2024年は相当な向かい風からのスタートだということが確定していました。
こうした逆風はありながらも心が折れなかったのは、ユーザーインタビューを重ねる中で自分たちが目指すハイセンスギフトの領域はまだスイートスポットだなと思えたこと、HYACCAというサービスが利用者にはかなり高い評価をいただけているとわかったこと、前の会社から引き受けたスタッフたちへの責任を果たしたいという強い思いがあったことが大きいです。
昨年の年頭所感でもHYACCAの伸び代を感じていることはお伝えしていますが、今でもその気持ちは変わりません。むしろ一層強くなっています。
悪戦苦闘した売上アップのための施策
2024年1月時点でのHYACCAには、「売上を戻す」というオフェンス面と「コスト構造を見直してサービス品質は変えずにコストを削減する」というディフェンス面の動き、両方が求められました。
オフェンス面で一番最初に手掛けたのは「サイトのUI/UX改善」です。
ウェブマーケティングをずっとやってきた私からすると、当時のHYACCAはサイトスピードも遅く、カートシステムも購入完了まで10回以上ページ遷移しないといけないなど、あまりユーザーフレンドリーではないように感じられました。
そのため、まずはサイトスピードの改善とカートの簡素化に取り組みました。しかし結果としては、売上・CVR共に全く変化がありませんでした。
これまでの自分のマーケティングの考え方が、ECの世界では全く通用しない。一体何をやったら売上が伸びていくのか。そんな焦りの中で色々と施策を打ってはみるものの、なかなか成果に繋がらない日々を過ごしました。
そして情報収集をしていく中で出会ったのが、EC業界のトップ戦線で20年以上活躍されていたYahoo!の元社長小澤隆生さんのPodcastでした。
この中で小澤さんが語っていたことはこうです。
言われてみるとそりゃそうだというような内容なのですが、自分たちで事業をしていると意外と目が離れがちになる内容で、確かにその時のHYACCAでは十分にやりきれていなかったと反省しました。
そこからは定期的に新作を用意して、ユーザーが「贈りたい!」と思ってもらえるような商品を増やしていきました。
価格に関しても、プライシングスタジオの高橋くんに手伝ってもらいながら、HYACCAでギフトを購入するときにユーザーが出せる適正価格を調査して、商品ラインナップに反映させていきました。
物流に関しても、それまではリスクヘッジも込みで3営業日後に発送する仕組みだったものを、最短1営業日後には発送して2日後にはお客様の手元に届くというように変更しました。
基本に忠実に運営していったところ、徐々に売上を伸ばせるようになりました。HYACCAの一つのターニングポイントでもあったなと感じています。
品質を落とさずにコストを下げる難しさ
もう一つ重要だったことは、「コスト構造の変革」でした。
“いいものを高く仕入れたら好まれるが儲からない”
“悪いものを安く仕入れたら好まれないが儲かる”
当時のHYACCAは前者の状態でした。
ユーザーからみると「いいものを提供してくれて嬉しい」となりますが、実は儲からないサービスはその他に投資することができないので、長期的にみるとトータルではユーザーに対していいサービスを提供できないということになり得ます。
だからこそ求められたのは『いいものを安く仕入れてユーザーにも好まれる』という状態です。
まず取り掛かったのは「ロジ(倉庫)の検討」でした。倉庫のコストには、商品の保管のための家賃、商品の梱包のための作業費、運送会社の運賃という3つが関わってきます。
HYACCAが提供する商品の中で最もユーザーからの支持が熱いのが”HYACCAオリジナルのGiftBOX”です。
バイヤーが厳選した商品でラインナップされ、開けた瞬間、贈った相手に感動が届く。これが強みとなっており、そのためのラッピング作業を品質高く行ってくれるパートナーが必要でした。
私としてはどれだけコストが削減できてもクオリティが下がるようなら絶対に変更するつもりはなかったのですが、10社を超える倉庫の会社さんとお話をさせていただいた末、ありがたいことに条件に見合うパートナーさんを見つけられました。
次に検討したのは「ダンボールやリボンなどの資材関係」でした。資材も一つ一つのものを厳選していたので、積み重なって大きなコストになっていました。こちらもラッピング同様に品質が下がってしまうと感動が弱くなってしまうので、手を抜けないところです。
ダンボールで数十社、リボンで数十社という形で一つ一つの資材でも入念に検討し、品質が下がらない会社を選定しました。
正直金額だけでみると、もっと安い会社もありましたが、HYACCAが一番重要視しなければいけないのは、贈った相手に「HYACCAで買ったら間違いない」と思ってもらえる安心感と、贈られたお客様がダンボールを開けた時に「こんなにいいものを贈ってくれたんだ」という贈り主への感動の気持ちだと思っています。だからこそ、妥協は絶対にしたくありませんでした。
数十社に会うというのは時間も労力も大変なものではありましたが、結果的に素晴らしいパートナーとめぐり逢え、非常に満足しています。
最後の最後に相談させていただいたのは「商品原価の部分」でした。
取引先からするとコロナが落ち着き、HYACCAからの発注量も落ちてきていたこともあり、原価率を下げるどころか上げたいという心境だったと思います。(私が逆の立場だったら当然同じことを思っていたはずです)
HYACCAの売上が落ちてしまっている当時の状況、どんな想いでM&Aをしたのか、これからこういう計画で伸ばしていく予定だから、未来を信じてHYACCAに賭けてもらえないか、そういった話をさせていただきました。
そんな中数社、今までの付き合いの中でHYACCAの世界観に 好意を持っていただき、これからの未来を応援したいといってご調整くださる会社がありました。
「成長してもっと大きな取引ができるようになるから」という言葉と気合いこそあったものの、保証できるものは何もない中で調整していただけたのは、本当にありがたい限りです。
その時ご調整いただいた取引先のことは、私は一生忘れません。何倍もの感謝を取引額という形でお返ししていきたいと、心から思っています。
この1年でも売上が伸び、取引額を増やせつつあるので、少しは恩返しできたかなとも思っていますが、まだまだ不十分。HYACCAを大きくする中で、絶対にお返ししていきます。
2025年はオフェンス強化の年に
コスト構造を整え、商品ラインナップも増やし、土台固めが進みました。2024年の後半には、広告を強化できるようにもなってきました。
最も業績が苦しかった2023年12月と比べると、2024年12月は約倍の売上を実現できています。
2025年はユーザーとの接点を強化し、もっと多くのユーザーにサイトを利用してもらう、そんな年にしたいです。
そのためにも広告やSNSの運用にも力を入れていきます。
また、訪れた多くのユーザーに欲しいと思ってもらえる商品を提供するための新作の投入、新しいギフトイベントへの拡張も積極的に進めたいです。
HYACCAの利用者数は、2024年の2.5倍程度を狙いにいく予定です。
ギフトを贈る時「まずはHYACCAを見てみるか」そう想起してもらえるいいサービスにしていけるよう、2025年もスタッフともども精一杯努力していきます。
最後に
【取引先の皆さまへ】
2024年は、今までのやり方をアンラーニングしていく1年でした。
取引先の皆さまにおかれましても新体制のHYACCAになり、「本当に会社として大丈夫なのか」という不安もあったかと思います。
そんな中、どの会社も私たちの未来を信じてあたたかくお付き合いくださり、本当に感謝しています。
信じていただいたご恩は絶対に返すことを約束するので、これからも強いパートナーシップのもと、HYACCAの成長を支えていただけたら幸いです。
【この1年一緒に走り切ってくれたスタッフのみんなへ】
私からは「今のHYACCAは世の中からまだ支持されていない。だから変わらなければいけない」ということを強く言わせてもらいました。今までの自分たちの成功体験を捨て、変えなければいけない瞬間も多かったはずです。
限られた人手でやらなければいけないことも多く、時に心身ともに疲弊して投げ出したくなる瞬間もあったことでしょう。それでも一緒に走ってくれて、本当にありがとう。
この1年の努力により、ようやくHYACCAはスタートラインに立てたかなと思っています。
でも、まだまだ足りていない。それは働く一人ひとりが一番わかっているはずです。
2025年は世の中の人からもっと支持してもらえるために、ますます努力していいサービスを作り上げていきましょう。
【いつもご利用いただいているユーザーの皆さまへ】
HYACCAはこれからも贈り主、受け取り主双方がギフトという体験を通じて、お互いの素晴らしい関係を確かめられるようなサービスに進化していきます。
大切な人の大切なイベントの時に、HYACCAを思い出していただき、ご利用いただけたら嬉しいです。
2025年も素晴らしい1年にできるように努めてまいりますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。