映画鑑賞感想会をした件①
映画って本当に素晴らしい。
2時間に凝縮された世界を堪能して、あわよくば創作のヒントを得られたらいいな。そんな気持ちで、同じBBコミュニティ4期に所属する春クジラさん主宰の映画感想会に参加した次第でございます。
今回は私が鑑賞中にメモした内容をまとめていきたいと思います。
春クジラさんと視聴したのは“マイ・インターン”という映画です。
ご存じの方も多いと思いますが、ロバート・デ・ニーロ主演の名作。
どうやら私は映画を見ながらでも文字を打てるようです。ブラインドタッチどころかノールックタッチですけど。なぜできるのかというと、小説を書いているときの感覚ににているのです。私は映像脳なので、脳内の映画を見ながらメモして書きます。
途中からコツがつかめたので、ほぼ自動筆記状態で十五分ごとに停止し、書いた文字を確認して自分の感想を追加していく流れが確立。4時間弱で13000文字ほどメモしましたが、後半は時間がなくて感想が減ってしまったのが残念です。そして、このノートは9300文字です。長い!
マイ・インターンの感想①
映画の基本情報
主演:ロバート・デ・ニーロ(主人公:ベン・ウィティカ―)
主演女優:アン・ハサウェイ(ヒロイン:ジュールズ・オースティン)
なお、この感想には盛大なネタバレがあります。まだ観ていない方は、観てください! 今すぐ! 本当に面白い映画なんです!
ネタバレする前に結論を言っておきますね
この映画に無駄なシーンは一つもない。本当に。
例えば映画の冒頭などは全部、伏線です。全部です。登場人物はもちろん、出てくる名前や小道具、衣装、何もかも意味があります。
そこを全部見つけるのは至難の業です。でも、パソコンに詳しい人が見たら……ブランド品に詳しい人が見たら……ヘアスタイルや食器、とにかく何か一つ見つけることができたら。あ、このパソコンはIBMだ、とかMacだ、とか。リモコンがパナソニックだ。ディオールのバック持ってる。あのジャケットはサンローランだ。とかとか。より楽しく観れるのではないでしょうか?
そして物語の登場人物や作品を制作したスタッフに共感できるのではないでしょうか?
映画はいろいろな人が関わっています。小道具は美術スタッフの趣味かもしれません。物語の暗示が込められているのかもしれません。そして音楽。聞いたことがあるな。好きな音楽だな。などなど。
そこも込みで、この映画に無駄なシーンは一つもないです。本当に。
なぜそんな情報量を生み出せるのか?
それは多くの人間が関わっているからです。各分野の専門家がチームを組んで一つの作品を作っているからこそ、画面いっぱいの情報を詰め込めるのです。そのすべてに気づくのは……とても難しい。なにせ専門家でも何でもない素人が見るのですから。気づく人だけ気づいてくださいのスタイルなのでしょう。そんなところも、私は好きです。まるで文芸小説のようです。いくつもの意味を内包しつつ、全部を理解しなくてもいいと突き放す。ニッチな人だけわかるように忍び込ませたメッセージは暗号のラブレターみたいです。
ネタバレありの感想
起承転結にしてみます
……無理でした。なぜかというと、この映画、前半と後半で主役が交代しているんです。たぶん。だいたい開始から58~9分あたりで交代してます。
上記は視聴中のメモそのままコピペです。このへんから主役はジュールズになります。たぶん。なので、半分づつ起承転結にしてみますね。
前半の起1
オープニングから5分57秒まで。このシーンは公園で太極拳をしているベンの場面からはじまります。独白のようなベンのナレーションと、ゆったりした音楽はジョン・ウィリアムズの“finale and end credits”。最初にベンはフロイトの引用をします。なぜかというと、海外では著名人の引用を会話に盛り込むのが知識人のセオリーだからです。つまり、視聴者にベンは教養のある人間だと印象つけるためです。
そこから、妻をなくしたこと。一人での生活について。たまったマイルで海外旅行に何度も行ったというくだりもベンが裕福な人間だと印象つけるためだと思われます。
ベンが誰か(何か)に向かって話しかけているシーンを何カットか挟んでいます。この独白がベンの回想だと視聴者に気づかせます。
妻という生きがいをなくし、仕事も定年退職したベンの心境が語られます。朝起きて、きちんとした服を着てスタバでコーヒーを飲み新聞を読むベン。相席になった会社員の男性ふたりの間で居心地悪そうにしているベン。
「心に開いた穴を埋めたい。早急に」
社会とつながりを持ちたい彼の気持ちは、この一言で十分に伝わりました。
彼はスーパーの掲示板に貼りだされたシニアインターン募集の黄色いチラシを見つけます。(関係ないかもしれませんがカラーセラピーてきに黄色に惹かれるときは「何かを学びたいとき」「好奇心を刺激されたいとき」なのだそうです)
そこで偶然会ったガールフレンドの老婦人(パティ)にチラシを読んで聞かせるという演出で視聴者に内容を説明します。とてもスムーズな導入。パティは「何をいってるのかちっともわからない」とチラシの感想を述べますが、ベンは「応募もネット経由だ。これは難関だぞ」と考えます。ここで、彼が新しいことに挑戦する意欲があり、前向きでポジティブな性格だと印象つけます。さらに、パティとの別れ際に見せた彼の反応でポジティブだけではない人間味を感じさせます。
ベンの自宅が画面に映しだされます。彼のこだわりや性格がわかるインテリア。そしてブルックリンという場所。
冒頭からの5分以上続いたナレーションはすべて、シニアインターンに応募するための履歴書動画だと映像でわかります。締めくくりの言葉がとても好きです。
前半の起2
冒頭6分で視聴者は履歴動画を見た面接官になりました。さて、みなさんなら彼をシニアインターンとして雇いますか?
決めるのはまだ早い。ということで起2ではベンが履歴動画をおくった会社の紹介。そしてもう一人の主人公ジュールズについて。
ちなみに、なぜ起2なのかと言うと……こっちも起なんです。むしろ起1はプロローグてきなものかもしれません。
オフィスを歩く女性の後ろをついて歩くようなカットから入ります。音楽は明るくカラフルなケンドリック・ラマーの“i”。インテリア雑誌に載ってそうな広いワンフロアのオフィス。古いビルを改装したのか、窓枠などは少しクラシカルですがそこもおしゃれです。そして、映像はオフィスで働く若い人たちに焦点が移ります。Photoshopで写真を加工している人、XDでサイトを作っている人、服を選ぶ人、会議をする人、開放的な雰囲気。商品撮影もオフィスでしているのがわかります。撮影から画像を加工して商品をアップするまで無駄な移動が少なく、会社は合理的な人間が作ったと視聴者に思わせます。
カメラは電話対応している女性をクローズアップします。もう一人の主人公、ジュールズです。ちなみに視聴者は彼女を見た瞬間に「彼女がこの物語のヒロイン(主役)だ」とすぐ気づくでしょう。なにせ、アン・ハサウェイですから。知らなくとも、その存在感は一目瞭然です。彼女はピンクベージュのもこもこセーターに短いスカートを合わせたラフな服装です。電話の内容は「結婚式の付き添いが着るドレス6着がすべてチャコールグレイで注文内容と違う。ピンクを注文したはずなのに」というもの。
ジュールズは電話の向こうにいる顧客の側にたって真摯に対応します。
「私が商品取り扱い店へ赴き直接色を確認してから金曜日までに到着するよう手配します。念のために、私の携帯番号をお客様にお伝えしますね。代金は全額返金いたします」
(電話顧客の言葉は聞こえないが、そこまでしなくてもいいと言っている感じ)
「ドレスの件は “やることリスト“ から外して大丈夫ですよ。レイチェル(顧客の名前)良い結婚式を」(ジュールズが結婚式を手配した経験があると推測できる)実に見事な電話対応! その昔、カスタマーセンターで働いていた私は拍手喝采。ブラボー!(伏線)
電話を切ったジュールズの後ろに、赤いセーターを着たあか抜けない真面目そうな女性が立っている。手に黄色い付箋と黒いペンを持って。ここで初見の人は彼女がこの会社の社長(または重役)だと察するはず。
「カスタマーセンター(顧客の電話)はすごく勉強になるのよ」
この言葉で、彼女が頻繁に電話対応をしていると視聴者に伝える。そして、彼女の仕事にたいする情熱や真摯さが伝わってくる。赤いセーターの女性がさまざまな報告をする。「キャメロンが待っていたけど帰った。明日のサイトの構成会議(ここは伏線というか本当にこのスケジュールで映画は進んでいた)」ジュールズはそれに返事をしながらオフィス内を自転車で移動。まわりは気にした様子もないのでオフィスを自転車で移動するのは日常と思わせる。
「お友達と一緒に買い物できるようにしたい。実現する方法を調べて」というジュールズに赤いセーターの女性は「それいい」と目を輝かせる。赤いセーターの女性にたいするジュールズの対応は雑。でも女性がジュールズをリスペクトしているのが伝わる。ジュールズのカリスマ性も。(そしてこの会話ももちろん伏線)
ここまで、だいたい8分です。映画はゆったりすすんでるように見えて、まだ10分経過していません。すでに膨大な量の伏線が仕込まれています。私のメモはまだまだ続くのですが、全部書くわけにもいかないので起2の感想に入りましょう。
前半の承
そろそろ読むのが大変になってきたかな? 文字数がすごいので前後編で二回に分けて投稿しますね。無事ジュールズ専属のインターンになったベンは持ち前のコミュニケーション能力を駆使して同僚と仲良くなっていきます。でも、ジュールズ(ボス)から仕事のメールはありません。承のはじまりはここから。
目覚まし時計がなる前に出勤準備を終えたベン。
「よし行動あるのみだ」
ベンはオフィスで社員に届け物をしている女性の手伝いをする。ジュールズはベンが配達しているのを不審な表情で見つめる。同期で若いインターンのデイビスにマーケティング調査の的確なアドバイス。二度目の訪問がない顧客を探す。とっても大事だよね。マーケティング調査はどんな職種でも必要になるよね。ふむふむ。ベン素敵。
ジュールズをリスペクトしているアシスタント(もしくは秘書)の女の子ベッキーにジェイソンが声をかける。けど速足で通り過ぎて無視。
ジェイソンはベンに相談する。
ジェイソン「女の怒りってどれくらい続く?」
ベン「原因によるね」
「悪気はなかったんだ。彼女と付き合った。でもうっかり彼女のルームメイトと寝ちゃった」(普通にクズだなおいw)
「それはダメだ」
「ルームメイトとは知らなかった。ベン、頼むよ。人生の先輩としてアドバイスくれない?」
「ちゃんとあやまって、君は大事な人だって伝えたんだろうね?」
「いや、それは……」
「言ってないのか? まさかツイッターで?」(すっかり若者のツールを使いこなしてるダンディなベン)
「まさか、謝罪のメールは送ったよ。いっぱい……(ベンの顔を見て)やっぱり、直接じゃないとだめか」
開始22分。すっかり職場の人に信用され尊敬されている。そのコミュニケーション能力が羨ましい。それ以上にベンが大好きだ。
ジュールズが赤いジャケット(サンローラン・伏線)を着てオフィスを歩く。同僚にアドバイスをするベンをみかけてキャメロンに「わたしのインターンは忙しそう」と愚痴る。
キャメロン「彼は当たりだよ。みんなに好かれてる」
目の前に、整理されてない書類が積み重なったデスク。(このデスクは冒頭でも出ている)
「あのデスクは見るな。精神衛生に悪い(みんなどこに置くかわからないものを全部あのデスクに置くんだよな。見るとストレスたまるぞ)」(もちろん伏線)
ジュールズは手の消毒をしながら歩いてる。(たぶん潔癖症)
ベンにメールが届く「ベン!助けて!(BEN!NEED TOU!)」差出人はベッキー。
ベッキー「ボスがサンローランの服を醤油で汚したの。スタジオにもってってくれる? スタジオに染み抜きがあるから」
「で、ジャケットは?」
「今着てる」
開始から23分50秒。次のシーンだけど、私の勝手な推測が多分に含まれています。
キャメロンとジュールズが会議テーブルでお寿司を食べながら出資者にいわれた内容を話している。(キャメロンはアドバイザー、コンサルティングの役割かな?)
キャメロン「外部からCEOを迎えてはどうか?」
ジュールズ「うそ……まさかそうくるとはね。なんで? 私が経営者として経験が浅いから?(ハーバード卒じゃないから?)やりかたが、型破りすぎるから? ここまで成功してるのに。まじで? 私じゃだめなの? 5年後の目標に、たった9か月で到達したのに?」
キャメロン「その成功に僕らがついていけない。君が会議に1時間遅れてくることを何と言われているか知ってるか? ジュールズ時間だ。最近はみんな仕事においついてない。会社が大きくなればますます如実になる。急速に大きくなればいずれパンクする」
前半の転
今回のnoteは長いので、最後まで読む人がいないかも……と思いつつ書いています。承ではメールを待つベンの姿を中心に、会社、仕事、同僚との人間関係、ジュールズの経営者としての資質などいろいろな問題が出てきました。そして転。このシーンでやっとベンとジュールズの関係が動きます。
ベンは窓の外を見る。ジュールズの車の運転手が、お酒を飲んでいるのを目撃(問題発生、次から転に入る)ベンが運転手に話しかける。
「やあ、調子はどう? マイクだよね?」
「気を悪くしないでほしいんだが、さっき上から君が飲んでるのが見えてね。今日は運転を辞退したほうがいい」
ジュールズが車に乗るまでベンは黙ってる。そして、運転手は自ら辞退。ベンが代わりに車を運転。ジュールズのママから電話がかかってくる。そして電話しながらメールを打つジュールズ。それを気配と音だけで察して注意するママ。娘の行動をよくわかっている。とても観察眼がある。「睡眠時間が少ない女性の38%が太る」と言うママ情報にジュールズが慄く。(伏線)このママ、賢い感じがこれだけで伝わってくる。合理的な思考も。ジュールズの合理的な部分は間違いなくママに似てる。
キャメロンとスカイプ通話。CEO候補アドウッドの資料をみたか確認。ザッカーバーグ(フェイスブックの創設者)は10代でもCEOを雇ったりしなかったけど? とCEOを雇うことに不満げなジュールズ。
目的地に到着。
「朝から何も食べてない」と言うジュールズにベンは「寿司でも買ってきましょうか?」と聞く。「水銀の過剰摂取になっちゃう」そう言って断るジュールズ。え、そうなんだ!? となる日本の観客……というか私。
サンローランのトレンチコートに黒いドレス。なんとなく彼女の戦闘服はサンローランと黒や赤のかっちりした服だと予想。入ったビルはBENTLEY PLAZA。もう一回観たら、このビルもどこかに伏線あったのかも。そう思わせるほど伏線が多い。
ビルから出たジュールズ。車の中でベンが買ったスープを飲む。(ベンの気遣いめちゃ素敵)車でキャメロンとまたスカイプ「最悪だった。女性差別、知ったかぶり、うちの会社のことなにもわかっていないわ。あんな人に会社を任せたら強引な経営をするに決まってる。そしたら私たちが死ぬ思いで獲得してきた客は離れる。隙あらば私たちの首も切るつもりよ。あいつ一度もまばたきしなかった。世界記録なみよ」(まばたきしない人が嫌いってもしかして……ママがまばたきしないの?? なんか理由あるよね)
ジュールズの家に到着。
「今日はありがとう。チキンスープも。机も」(ベンがカオスな机を綺麗にした)
「誰がこの会社を大きくしたのか。忘れないで」(さりげないけど、こんな場面でちゃんと言葉をかけれるってすごい。見習いたいコミュ力)
ジュールズの家の玄関先で、優しそうな旦那さんと娘が出迎える。旦那さんは奥さんの仕事への理解がある。けど……なんだか不穏な雰囲気。視線や言葉の端に不吉な予感が……これ続きをしっているから? いや、初見からそんなイメージだった。
全編通してお気に入りのシーンはここ!
夜。オフィスでジュールズが仕事をしている。黒い水玉のワンピース(えりつき)髪はアップしてる。たぶん戦闘服。オフィスの向こうではベンもパソコンの前に座っている。
ジュールズがビール(シャンパン?)とピザをもってベンの席で一緒に食事。やっとジュールズがベンを認めはじめた。ピザを半分に折って食べるベン(たしかニューヨーク州はその食べ方)。ジュールズはCEO候補と面接した話をする。
「面接で彼はこういったの……ギャルサイトって。そのあとは話を聞く気が失せた」ジュールズが話をかえる「(ベンは)前、何をしていたの?」(CEOへの興味が失せた話のあとにベンへの質問することで協調される興味のベクトル)
「デックス社で印刷部長を、その前は営業部長を」
「ここ(オフィス)は前、印刷工場で……まさか」
ベンのニヤニヤ顔(この表情もかわいい!)このビルのことならなんでもしっている。40年務めた。近くの木が植えられた日も覚えている。そこで、はじめてジュールズがベンを「経験豊富な人生の先輩」だと認識する。
「家に戻ったようだ。リフォームされているが、我が家だ」
ここから、フェイスブックの質問を埋めていく過程でベンのプロフィールをジュールズが知る場面、もとても好き。そして、情報の出し方が天才的。どんなに年が離れていても、好きなものが一緒だったり、知ってるものがいっしょだったり。そうやって、違うことと似ていることを知るのが、コミュニケーションなんだなーって。共感とリスペクトが素敵。
「おめでとう! これであなたもフェイスブック世代の一員よ」(ここなぜか涙が出るほど感動する。たぶん世代を超えた瞬間だからだなぁ)
「久しぶりに仕事じゃなく、大人の男性と大人の会話をできた」
「よくわかります」
私も同感。よくわかる。
前半の結
ジュールズを車に乗せて家に送るベン。いびきをかいて寝てるジュールズ。(すごいリラックスしてたんだよね。ジュールズすっかりベンに心を開いてる)
目覚めたジュールズが「いびきかいてた?」と慌ててベンに尋ねる。そして言い訳のように「うちの両親は睡眠学者で、私は生まれた時から両親に研究されてるの」と言ったジュールズ。そのへんに母親との確執がありそう。これだけ伏線を回収しているのに、母親の部分だけは謎なんだよね。
「私今まで車で寝たことないのに。驚きだわ」
ここから親しげにベンと会話するジュールズ。
ここまで58分……半分ですよ。1時間でこの濃縮された内容。
めちゃくちゃはしょってるのに、noteも一万文字。後半は少し文字数削りますね……たぶん。
誤字脱字などありましたら、気軽にコメントやツイッターなどでお知らせいただけると嬉しいです。