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実際、他では食べられない。ご当地カレーではないご当地カレーを、岐阜エリアで発見


岐阜タンカレーか…気になるな〜」

私は今、とても迷っている。注文するラーメンセットのご飯物をどうするか、をだ。

「え?部長はカレーにするんですか?相変わらず冒険しますね…僕は無難にチャーハンにしときますよ」

目の前には、一緒に取引先に訪問するヤマダ君がいる。

「よし、決めた。私は冒険してみるよ。岐阜タンカレーで!」

以前訪れた時は『岐阜タンカレー』なるメニューは無かったので、最近追加された様だ。私はこの地域チェーンのラーメンを大層気に入っている。その店が供するご当地カレーを、試さない手はないだろう。

まずはラーメンが着丼。
相変わらずウマい。大抵のラーメンの味のパターンは知っているつもりだが、やはりこの味は唯一無二だ。これぞ県民のソウルフード。この分なら『岐阜タンカレー』にも期待だ。どんなタンカレーが出てくるのか…

そして、ラーメンから数分遅れでカレーも到着。

『アレ?思ったより普通だな…』

もったりとして薄黄色い、典型的な昭和の家カレー。もうちょっとこう、牛タンをじっくり煮込んだコク深い色合いを想像してたのだが…

食べて見ると味も普通で、なんの特徴もない…
肝心の牛タンも、どこにも見当たらない。というより具そのものがほとんどない。1cmにも満たない豚コマらしき肉が数切れ確認できるだけだ。

この手の冒険が失敗するのはあるあるだが、地域の名を冠したご当地メニューで、ここまでなんの特徴もないのは珍しい。ヤマダ君のチャーハンが羨ましくなってきた…

何かがおかしい…
謎は消えないまま、会計を済ます。

『いったい岐阜タンカレーとは何だったのか…』

店舗を振り返り、名残惜しく手掛かりを探る。

文字通り看板メニューの、チャーハンを頼めばよかったと思いながら、以前にはなかった変化に気づく。

『町中華…?』

「岐阜タンメンって、町中華も始めたんだ」
ヤマダ君に確認してみる。彼は私より岐阜エリアには詳しい。

「ああ、そうですね。僕はまだ試してないですけど、でも岐阜タンの町中華ならきっと美味い筈ですよ」

『岐阜タンの町中華…?』

そういうことか…


私がこよなく愛するこのラーメンの名は岐阜タンメン。それは、店舗名でもある。

岐阜タンカレーとは「岐阜」のタンカレーではない。
店名の「岐阜タンメン」を略した「岐阜タン」のカレーだったのだ…

さりげなく「岐阜タン」呼びをかますヤマダ君はこの事実を知っていた筈だ。にも関わらず私の冒険を止めないとは…

まあ、人のせいにしても仕方ない。
カレーが普通だったのは結果論で、そこまで彼にわかる筈もない。

「で、どうでした?岐阜タンのカレー。全然普通だったでしょ。僕なら、2回目はないですけどね


知ってたんかい。
じゃあ、止めろよ。


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