
小さな小さな広告バナーが、紙媒体あがりを悩ませる
デザインに関わる仕事をしてきたので、クリエイティブの「良し悪し」を判断する基準は持っているつもりだった。…のであるが、紙媒体からWEB媒体に身を転じて、その自信が揺らいでいく。
当然であるが、WEB/デジタルの世界ではユーザーの反応が可視化される。その挙動は、積上げてきた直感と異なる事がしばしばだ。
なかでも、「広告バナー」に類する「小型のクリエイティブ」の反応は、紙媒体ベテラン勢の直感・予感をことごとく裏切りまくる。
一般的にWEB広告を実施する場合は、複数バナーの配信が奨励される。いわゆるABテストというやつだが、この結果が実にモヤモヤさせる。
■なんといっても、手間と結果が比例しない
手間暇かけて作り込んだバナーよりも、普通にみて「物足りない」バナーのほうが反応が良かったりする。極端な例でいえば、企業ロゴをそのまま掲載しただけのバナーが一番良いなんて事もある。今時はクリエイティブとテキストの組み合わせである「フィード広告」が一般的なので、クリエイティブパーツは「単なる写真」である事もしばしばだ。
デザイナーとしてはどうにも釈然としない。
■その上、質と結果も比例しない
例えばクリエイティブパーツが単なる写真だったとする。その辺のスマホで適当に撮った写真と、カメラマンがちゃんとスタジオで撮った写真を比べた場合に、前者のほうが反応が良かったりする。
デザイン物でも、従来の感覚だと「上手くない方」が反応が良い、なんて事も頻繁に起こる。
■で、そもそも結果が一様ではない
とある組み合わせのABテストで何等かの傾向がでたとする。で、その傾向が、結構毎回変わるのだ。
クリエイティブも、配信期間もターゲティング設定もすべて同じ。ただ配信した時期が異なるだけで全く違う結果がでる。時期が異なるのが要因だ、というのはわかる。にしても、一貫性がなさすぎる。
上記の如く、広告バナーの結果は紙媒体あがりの私を悩ませる。
なぜこのような事になるのだろう?
広告のアルゴリズムとか、いろいろ要因はあるのだろうが、ひとつだけはっきりしている事実がある。
とにかく小さい
広告バナーの主たる表示先であるスマホの画面がそもそも小さい。その中で、更に小さい広告枠にバナーが表示される。
小さいから、そもそもデザインを工夫できる余地が少ない。故にユーザーにとって、好みを判別する面積そのものが少ない。小さいから、スマホ内の周辺表示物からも影響を受ける。
紙媒体でこんなに小さい広告クリエイティブはちょっと思いだせない。
小さすぎる事が、広告バナーが我々を悩ませる本質的な要因だ。
広告バナーは本当に小さい。
折込チラシなどと比べると、その情報量は100分の1以下どころではない。紙媒体を経験した私からすれば、心身ともに仕事そのものは、とっても軽く感じてしまう。
そう。私にとって、広告バナーの制作はチョロく感じる。これはある意味メリットにも思える。
いや違う。
これはメリットではない。
その小ささ故に、私は広告バナーを侮っている。
その気持ちが、悩ましさの原因だとしたら・・・
小さいと感じる事自体が、問題の本質なのかも知れない。
「良い広告バナー」の普遍性は結局存在するのだろうか?きっとある。
Web広告ガチ勢の方々からすれば「何言ってんだ」という話しだろう。
私がまだ知らないだけだ。
小さな小さなバナー広告は、本当に奥深い。
「小ささ」を言い訳するのはやめましょう。
いいなと思ったら応援しよう!
